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停止不要の「ETCレーン」で20km/hまで減速させる理由とは

停止不要の「ETCレーン」で20km/hまで減速させる理由とは

車載器との通信は80km/hでも可能

「海外の自動料金収受システムは、減速することなく、バーもなく、通過するだけで料金の支払いができる国が多い」という誤解もあるようだが、そんなことはない。フランス、イタリア、韓国、中国。どこも日本のようなゲートを通過するタイプで、開閉式のバーがついていることが多い。

 アメリカで「タグ方式」を採用している一部有料道路は、減速せずに通過できるが、そちらのほうが例外的だ。

 また、日本のETCが、ゲートで20km/h以下に減速するように指導しているのは、ゲートが開かなかった場合の追突事故防止が主な目的で、実際には80km/h程度まで通信は可能。首都高の出口などゲートのないところでは、180km/hまでOKだ。

 スマートインターチェンジの場合のみ、一旦停止が必要だが、それは、簡易型インターをなるべく安く建設するため、ゲート側の通信機器に安価なものを使っているからだ。個人的には、それで不便は感じていない。

 ただ、日本のETCが、非常に複雑かつ高価な世界独自のシステムであることは間違いない。

 こんなシステムが採用されたのは、もともと旧建設省、旧運輸省、警察庁が、それぞれ別々にシステム開発をしていた結果とも言われるが、真相は闇の中。ただし、これほど複雑かつ高価になった理由も確かにある。

 理由その1は、日本の高速道路料金が、世界的にも飛びぬけて高いことだ。フランスやイタリアに比べても数倍で、青森から鹿児島まで特大車で走ったら、片道7万円を超える。金額が金額だけに、高い精度が求められるのは確かだ。前払い方式ではなくクレジットカード方式が主になったのも、確実に料金の支払いを確保するため。料金がバカ高く、その分ETC割引額も大きくなるからこそ、高い車載器を買う気になるという面もあるが。

 アメリカのタグ方式は、「捕捉率が9割を超えればいい」程度の精度しかない。なぜなら、アメリカのインターステート(高速道路)は原則無料で、日本のような全国の有料道路網があるわけではない。有料道路自体がそれほど多くはないし、しかも州ごと、道路ごとの運用なので、料金もせいぜい数百円程度なのだ。

 もうひとつの理由は、日本人の国民性だ。

 日本は、お上の間違いを許さない風土があり、ETCにも高い精度や秘匿性が求められる。そのため、高速度で複雑な暗号通信を行える、高度なシステムが導入された。

 もちろん日本のETCも、通信エラーはゼロではないが、イタリアの「テレパス」など、しょっちゅうゲートが開かなくなるし、呼び出しボタンを押しても、係員もなかなか来ない。日本でそんなシステムを導入したら、非難が殺到するのは明らかだ。

 日本のETCでは、ゲートが開かない原因の大部分がカードの未挿入や誤挿入。通信エラー率は非常に少ない。それだけシステムの精度が高いことは間違いない。

  

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