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半自動運転を謳う日産プロパイロットは本当に使える装備か?

半自動運転を謳う日産プロパイロットは本当に使える装備か?

改善希望点はあるものの疲労軽減は間違いない

 今や、上級クラスの新型車には装着されていて当たり前になりつつある、追従機能付きACCやステアリング制御など先進の運転支援技術。全車速で追従機能が使えるクルマでは、もはや出発から到着までペダルを踏まずに走りきってしまうことだって、状況によっては可能という時代になっています。

 そんななか、ミニバンクラスとして世界で初めて、そうした運転支援技術の「プロパイロット」が搭載されたのが、2018年上半期のミニバン販売台数No.1を獲得した、日産セレナ。ドライバーに代わってアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動で制御するプロパイロットを日産は「半自動運転」と謳っていますが、そのフレーズだけでも未来感たっぷりで、セレナ人気の原動力のひとつとなっていることは疑いようがありませんね。

 でも、そのプロパイロットが標準装備のグレードは、2016年の発売からしばらくは販売されていたものの、現在はオプションで選択できるのみ。しかもアラウンドビューモニターなどさまざまな装備がセットになった「セーフティパックB」というパッケージオプションしかなく、これがお値段24万3000円と、なかなかお高いんです。

 なので、「興味はあるけどそれって本当に使えるの?」「買って損はないの?」とモヤモヤしている人も多いはず。今回はそんなところを、実際に試してお伝えしたいと思います。

 まずプロパイロットの特徴を簡単におさらいすると、前方車両や白線を検知する単眼カメラや、高度な画像解析技術などによって、車両が状況に応じたアクセル操作、ブレーキ操作、ステアリング操作を自動制御。作動するのは高速道路に限られますが、前走車がいれば0km/hから作動し、それによって前走車との車間距離を一定にキープしつつ、直線でもカーブでも車線の中央を走る手助けをしてくれるというものです。

 高速道路での憂鬱なノロノロ渋滞から、つねに緊張感を伴う高速巡航まで、ドライバーの負担を大きく軽減してくれるのが嬉しいところ。ただあくまで運転の主導権はドライバーにあって、プロパイロットはその手助けをしてくれるものなので、手離し運転はNG。ギュッと握っていなくても大丈夫ですが、両手がステアリングに触れている必要があります。

 実際に使ってみると、最初に感じる魅力はプロパイロットの設定ボタンや画面に表示されるアイコンがとてもわかりやすいところ。ステアリングにあるボタンも大きめで、走行中でもすぐにわかるし、設定も指で2回押すだけで完了します。

 他メーカーの同じようなシステムでは、ステアリングのボタンが小さくてアイコンも見えにくかったり、作動してるのかどうか、よくわからずに不安になるクルマもあります。しかしセレナは運転に不慣れな人や、クルマの最新技術に対してあまり敏感ではない人も多いファミリー層がメインターゲットだったため、あらゆる可能性を考慮して、誰でも簡単に使えるインターフェースを実現したのだとか。

 走行中に白線が消えている区間などでは、ステアリング制御だけオフになったりするのですが、その状況もグリーンのアイコン表示が目立つので、いつでも作動状況がすぐわかって安心できるのがいいところです。

 前走車の車速に合わせて、車間距離を保ちながら走るところは、長め、普通、短めと好みの車間距離が選べるのですが、それも離れすぎず、近づきすぎず、なかなか絶妙だなと感じます。

 アルファード/ヴェルファイアなどLサイズミニバンになると、車両重量が重くなるせいなのか、いちばん短い設定にしても前走車と離れすぎていて、バンバン前にほかのクルマが車線変更してきちゃう。そのたびにブレーキ制御が作動するので、けっこうストレスだったりするんですよね。なのでこの距離感、大事です。

 ただ速度域が高いときのアクセル制御は、ちょっと荒っぽいような気も。とくに上り坂なんかでは、いきなりグワーッと加速してエンジン音も大きくなるし、わが家では子どもがビックリしてました。もうちょっと、どんな場面でもスムースに加速してくれたらいいんですけどね。

 その点がピカイチなのは、スバルのアイサイト・ツーリングアシスト。やっぱり早くからアイサイトを搭載していたノウハウが熟成されているんでしょうか、首都高などのカーブや合流の多いところでも、とってもなめらかな加速なのに感心します。

 さらに、ノロノロ渋滞のときは気にならなかったのですが、速度が上がるにつれてステアリング制御がヒョコヒョコと落ち着かず、軽く握った手の中でつねに微妙に動いているのが気持ち悪い。制御が敏感すぎるのか、足まわりの動きとのマッチングが今ひとつなのか? 後日、専用パーツでチューニングされたセレナ ニスモに試乗してプロパイロットを試したら、このヒョコヒョコがほとんどなくなっていたので、きっと足まわり系のせいなのでしょう。でも、これは別に気にならないという人もいたので、走る場所や手の感覚の違いにもよるのかもしれません。

 それから、誤作動はしないの? という不安を持つ人もいると思いますが、2時間ほどの試乗のなかで、誤作動は数回ありました。そのうちの1回は、高速道路の本線が右にカーブしていて、IC出口が直線上にあった場所。私は本線を走り続けたかったのに、出口に向かって行ってしまったんです。これは明らかに、白線を読み違えたことによるものでしょう。

 そんなときも、自分でステアリングを切れば、もちろんその操作が優先されるし、ブレーキ操作も効くので、とくに慌てることはなかったですけどね。やっぱり、いくらプロパイロット作動中でも、ボーッとしてたらダメ。ということはよくわかりました。

 そんなわけで、ステアリング制御や加速フィールはもう少し熟成してほしいとは思いつつ、全体的な感想ではプロパイロットは“使える”と言えます。何より、運転している自分だけでなく、もう1人、有能なサブドライバーが一緒に前を見て、いざというときに助けてくれるというような安心感だけでも、ドライブ中の負担がぜんぜんラク。

 私も普段から子どもを乗せてミニバンを運転していますが、後ろで子どもが泣きわめいたり、遊んでいたオモチャを落としたりすると、何もしてやれないもどかしさと、早く対処しなければという焦りで、運転に集中しているつもりがどうしても気を取られてしまうんですよね。ぶっちゃけ、ヒヤリとしたこともあります。

 それに、せっかく子どもと遊びに行っても、帰りの渋滞が憂鬱で早く帰ることばかり考えてしまったり、疲れて現地で寝ていたり、ミニバンだからこそ、こうした半自動運転技術で救われる人がたくさんいる、とも言えるんじゃないでしょうか。

 ガチライバルのトヨタ・ヴォクシー/ノアには、まだ追従機能さえ付いていないし、ホンダ・ステップワゴンは追従機能やステアリング制御を含む「Honda SENSING」が搭載されているものの、ステアリング制御は65km/h以上での作動のみ。そこをすべてカバーしているセレナは、やっぱり売れるだけのことはありますね。オプション価格が高く、設定できるグレードが限られてしまうのはネックですが、興味があるならぜひ付けてみることをオススメします。

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