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1.6リッターだが4モーターで1000馬力オーバー! F1技術で作られたメルセデスAMG「ONE」は異次元の中身だった (2/2ページ)

1.6リッターだが4モーターで1000馬力オーバー! F1技術で作られたメルセデスAMG「ONE」は異次元の中身だった

この記事をまとめると

メルセデスAMGがハイブリッド・ハイパーカーの「ONE」を発表した

■1.6リッターV6ターボと4基のモーターによりシステム最高出力は1063馬力

■F1参戦で得た知見を市販車に落とし込んだAMG創立55周年を祝うにふさわしいモデルだ

AMG創立55周年にあたる日に発表されたハイパーカー

 2022年6月1日。ドイツ、アフォルターバッハのメルセデスAMG社は、長年にわたって開発を続けてきたハイブリッド・ハイパーカー、「ONE」の生産モデルを正式に発表した。ちなみにこの6月1日という日は、メルセデスAMGの前身であるAMG社が、55年前の1967年に登記された日であり、その意味でも、それはこれまでの技術の進化を物語る重要なモデルといえるのだ。

 ONEは、その車名が物語るように、世界でもっとも近代的で効率的なF1ハイブリッド駆動技術を、サーキットからオンロードへと持ち込んだモデルだ。パワーユニットのシステムはひとつの内燃エンジンと4個のエレクトリックモーターから構成されており、トータルで1063馬力の最高出力を生み出し、最高速は325km/hに制限されている。

 このきわめて複雑な開発作業は、イギリスのブリックスワースのメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインとの密接な関係によって完成されたものであり、それもまたサーキットとオンロードの間に存在する垣根の低さを、ドライバーが体験することができる大きな理由となっている。

 ちなみにメルセデスAMGは、その走行を含めたワールドプレミアを、6月23日に開幕するグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで行う予定だ。

 メルセデスAMG社の取締役会長であるフィリップ・シーメル氏は、「メルセデスAMG ONEで、我々は限界を超えることに成功した。なぜなら最新のF1パワートレインを日常的にオンロード走行に適合させるという膨大な技術的挑戦は、間違いなく我々の限界への挑戦に等しいものだったからです。開発の途中で多くのエンジニアは、このプロジェクトの実現は無理だと考えたかもしれません。ですが、アフォルターバッハとブリックスワースのチームは、けしてそれを諦めることなく自分たちを信じて、それに取り組んでくれました。私は関係者の全員に最大の敬意を表し、このチームの功績を誇りに思います」

 ONEに搭載されるパワーユニットのディテールを、もう少し詳しく解説しておこう。E PERFORMANCE ハイブリッドシステムと呼ばれるそれは、メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインによってF1マシンから直接導入されたもの。ハイブリッド内燃ターボエンジンに合計4基の電動モーターからなるそれとF1マシンとのもっとも大きな違いは、前輪の左右もエレクトリックモーターで駆動していること。残り2基のモーターは、ひとつはクランクケースに連結して内燃機関を直接アシスト。もうひとつはターボチャージャーに組み込まれる仕組みになっている。搭載エンジンは1.6リッターのV型6気筒。整理すると、ONEのパワーユニットは、電動アシスト・シングルターボ付き1.6リッターV型6気筒ハイブリッドガソリンエンジン+前輪を駆動する2モーターということになる。

 これは、現在のF1パワーユニットに相当するもので、4本のオーバーヘッドカムシャフトはスパーギアで駆動される。高回転を実現するために機械式バルブスプリングの代わりに空気圧式バルブスプリングを採用しているのも技術的特徴のひとつ。参考までにV6エンジンのレブリミットは1万1000rpmだ。メルセデスAMGによれば、潜在的には、このエンジンはさらに高回転に対応することも可能だが、市販のガソリンを使用する関係から、あえてレブリミット以下にこの数字は抑えられているという。

 この高回転型パワーユニットは、ハイテクターボチャージャーでブーストされている。排気ガスタービンとコンプレッサーターボを離れた位置にレイアウトし、各々をシャフトで連結。ターボチャージャーの取り付け位置を低くすることが可能になったほか、約90kWの電気モーターを搭載することでターボチャージャーのシャフトを直接駆動。コンプレッサーホイールを最大10万rpmまで加速した後に、排気ガス流へとそれは引き継がれる。これはF1マシンでいうところのMGU-H(モーター・ジェネレーター・ユニット・ヒート)の技術にほかならない。

 そのメリットは、排気流がまだ十分ではない低速域から全回転域でターボのレスポンスが大幅に向上することとそれによる加速の最適化、ドライバーがアクセルやブレーキから足を離してもなお、常にブースト圧を維持できることなどがあげられる。排気ガス流の余剰なエネルギーを利用して、発電機として電気エネルギーを生成することもまた、大きなメリットといえるだろう。

 この電気エネルギーは、高電圧リチウムイオン電池に蓄えられるか、もしくは電動のフロントアクスル、内燃機関の電気モーターに供給される仕組み。つまり、こちらはMGU-K(モーター・ジェネレーター・ユニット・キネティック)ということになる。その出力は120kW。内燃エンジンに直接搭載され、スーパーギアシステムを介してクランクシャフトに接続される。ターボチャージャーの最大過給圧は3.5バールだ。

 各々のシステムのパワースペックを整理しておくと、まずV型6気筒エンジンは574馬力、クランクシャフトに直結されるエレクトリックモーター、MGU-Kが163馬力、フロントアクスル上のエレクトリックモーターが左右トータルで326馬力、電動式ターボチャージャーによるMGU-Hが122馬力となり、システム合計の最高出力は1063馬力と発表されている。

 また、搭載されるリチウムイオンバッテリーもメルセデスAMG独自のもので、こちらもF1マシンのそれを模したデザイン。搭載容量は8.4kWh、これで最大18.1kmのゼロエミッション走行も可能になるほか、バッテリーは常に45℃という安定した動作温度を保つ。

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