この記事をまとめると
■タクシードライバーなど人を乗せて運転の仕事をする際には二種免許の取得が必要だ
■二種免許以外にも地理試験という試験合格が必要なエリアもある
■いま業界では人手不足解消の観点から地理試験の廃止を検討しているという
タクシードライバー不足解消の一手になるか?
タクシーの運転を仕事とするために必要な条件として、”二種免許の取得”があることは多くの読者が知っているだろう。加えて、自治体によっては、地理試験の合格という条件がある。実施する自治体は、大都市や観光名所などがある地域である。
地理試験は、その名のとおりタクシーの営業をする地域の道路や施設など、地理の知識を確認する試験だ。主要幹線道路名や、主要施設のほか、主要施設と市町村などの関係、駅との関連、乗車地から降車地までの最短距離などを問われる。
ほかに、2015年から新しく加わったのが、輸送の安全および利用者の利便の確保のための試験である。こちらは、道路運送法など、タクシーの営業に関連する法律の問題のほか、営業する地域の交通事故の発生状況や事故防止、事故が起きた際の対処などの出題があるという。接客における障害者や高齢者への対応の仕方なども問われる。
一方、地理試験を廃止する要請の声が出ている。最大の理由は、タクシーの乗務員不足で、現在は最盛期の2割ほど減っているという。それに対して、タクシーの利用者は増えていることから、なかなかタクシーを利用できないといった状況があり、タクシー運転者の応募を増やすうえで、難関を減らそうというのが地理試験廃止の狙いだ。
というのも、地理試験に複数回不合格となる事例があり、タクシーの運転者として仕事に就くまでに時間を要し、なかなか収入を得にくいといったことが起きているという背景があった。
また、近年では、タクシーもカーナビゲーションを装備し、アプリケーションを使った配車依頼もあり、機器の機能を活用することで、必ずしも営業する地域の地理などに精通していなくても、業務を行える環境が整いつつある。
ただし、地理試験の廃止には賛否両論ある。
賛成派は、タクシー運転者を増やして顧客の利便性(タクシーをすぐに利用できる)ことを高めるのが顧客満足に叶うというものだ。反対派は、運賃をもらっての営業であり、万一、事故や渋滞などで移動時間が余計にかかるような場合に、地理に詳しければ最短の経路に変更して目的地へ到着できるなどの意見がある。また、クルマの所有者が他人の移動を助けるライドシェアとの差別化といった視点もある。
運転者不足の問題は、物流だけではない。トラック輸送もタクシー営業も、過酷な労働のひとつだ。それでも運転を活かして暮らしたいという人を支援する動きも必要で、賛成と反対どちらが正しいという以前に、いかに労働条件を改善し、かつ顧客満足度を高めるかという双方の視点で解決策を模索していくことが大切だろう。