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よくわからんけどつい言いたくなる「ハイメカツインカム」! 1980年代にトヨタが謳った謎の機構の正体とは?

よくわからんけどつい言いたくなる「ハイメカツインカム」! 1980年代にトヨタが謳った謎の機構の正体とは?

この記事をまとめると

■1980年代にトヨタが採用した4バルブDOHCのことを「ハイメカツインカム」といった

■ハイメカツインカムは排気側カムシャフトのプーリーをなくすことでヘッドを小型化した

■燃費改善や低いボンネットフードの実現による造形の高い自由度などのメリットがあった

トヨタの4バルブDOHCエンジン「ハイメカツインカム」

 ハイメカツインカムとは、1980年代半ばにトヨタが採用したDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)4バルブエンジンのカムシャフト駆動方式だ。

 1970年代の排出ガス規制が、昭和53年度規制(1978年)で一段落すると、国内の各自動車メーカーは高性能化へ舵を切った。ガソリンエンジンでは、ターボエンジンとDOHCエンジンの採用が急速に広がる。日産自動車は、ターボエンジンでまず出力向上を目指し、対するトヨタはDOHCエンジンで高性能化への特色を出した。

 それまで、DOHCといえども2バルブが主であったのを4バルブ化し、吸排気量を増やして高性能化をはかった。とはいえ、DOHC4バルブエンジンは、スポーツカーなど高出力エンジンの技術と考えられてきた。これを、ごく一般的な乗用車にも適用したのが、ハイメカツインカムである。

 トヨタは、DOHC4バルブ化に際し、DOHCエンジンと呼ばず、ツインカムエンジンと呼ぶようにしていた。それをさらに普及版とするうえでハイメカの言葉を追加した。

 具体的には、吸気側のカムシャフトは、これまでのDOHCエンジンと同じようにベルト駆動のためのプーリーをもつが、排気側のカムシャフトは、吸気側のカムシャフトに組み込まれたドリブンギアで、排気側のシザースギア(バネを使ってゆるみをなくし、振動や騒音を抑える機構を備えた歯車)をまわし、稼働させる。これにより、排気側の駆動のためのプーリーを廃止した。

 通常、カムシャフトを駆動するプーリーは吸排気それぞれ横並びでエンジンの前端部に取り付けられ、これによって1本のベルトで吸気と排気のカムシャフトを駆動する。吸気と排気のバルブタイミングを適正にするため、プーリーの直径は、それなりの半径が必要だ。これを片方(排気側)なくせば、プーリーひとつ分の横幅を抑えられ、エンジンのシリンダーヘッドを細身にできる。

 シリンダーヘッドを小さくできれば、吸排気のバルブ挟み角を狭めることができ、バルブの角度が立つことによって、燃焼室を小さくできる。燃焼室が小さくなれば、燃料をより素早く無駄なく燃やし尽くすことに役立ち、効率が上がるので燃費が向上する。一般の乗用車では、出力確保も大切だが、燃費改善が重視されるので好都合だ。

 それでいて、4バルブであることにより吸気も排気もより多くのガスの移動が可能になるので、出力自体も上げられる。

 これまで、SOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)が乗用車の定番だったが、ハイメカツインカムとすることにより、DOHC4バルブ化が成り、点火プラグの配置も燃焼室の中央に設けることができ、それらの仕組みが高性能さを消費者に印象付ける効果を持つだけでなく、燃費や出力という実利も生まれる。

 ほかに、通常のDOHC4バルブと比べエンジンの小型化につながり、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)の乗用車では、ボンネットフードを低くするなど造形の自由度も高められる。

 スポーツカー向けのDOHC4バルブと比べれば性能は落ちるが、一般の乗用車向けSOHCエンジンより高性能となり、より高い機構をもつエンジンということで、ハイ・メカニズム=ハイメカというわけだ。

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