
この記事をまとめると
■加藤製作所から新型ラフテレーンクレーンが登場
■米カミンズ社の最新エンジンを搭載している
■カミンズ製エンジンの特徴について詳しく解説
カミンズ製エンジンの環境性能はトップクラス!
2024年12月、加藤製作所から80トン吊りのラフテレーンクレーン「SL-850RfIII」が登場した。ラフテレーンクレーンとはホイールクレーンの1種で、走行とクレーン操作がひとつの運転席で行えるという特徴をもつ。ラフテレーンは荒れた地形という意味で、不整地でもスムースに走行できることからこの名があるのだという。
80トン吊りは、この種のクレーンとして大型に分類される。車両の転倒を防止するため、横に張り出して地面に設置させるアウトリガーに、ウェイトを追加装備して安定性を増すことができるので、重量物の吊り上げが可能なのだ。
クレーン車といえば、建設現場で力強く働く姿ばかりを想像するが、近年の建設機械はコンピュータを駆使した最新技術の塊のようなものだ。とくに安全装置の進化には、目を見張るものがある。同車両のクリアランスソナーシステムは、その代表的な例といえよう。
超音波センサーを使って障害物を検知し、走行中の安全性を確保するというものだ。また、セーフティービューシステムには、視認性が高くタッチ操作が可能な12.1インチの大型モニターを採用。キャリアの前後左右に配した6つのカメラ映像を合成し、車両上部から俯瞰した画像を生成して周囲の状況を知らせてくれるのだ。
安全装置と並んで注目するべきは、環境性能であろう。建設機械は車両が重いだけではなく、仕事量が大きいのでハイパワーなエンジンが必要になる。それは取りも直さず、高排気量エンジンを搭載するということだ。しかし、排気量が大きければ、必然的に多くの燃料を消費して大量の排気ガスを出すことになる。これでは、地球環境に優しいとはいえない。
これまでも、建設機械には環境に配慮する技術を投入したエンジンが、数多く投入されてきている。なかでも世界的に評価が高く多くの国で採用されているエンジンが、米カミンズ社のエンジンである。同車両は、このメーカーの最新エンジンを搭載しているのだ。カミンズは世界190カ国以上に拠点をもち、建設機械のほかにも鉄道車両や産業機械向けなど、広いバリエーションで汎用型エンジンを展開する。多くがOHVタイプ(一部はSOHC)でターボチャージャーを装着し、排気量を抑えながら高出力を実現しているのだ。
カミンズ社のエンジンは世界的な展開をしているということもあるが、環境性能はトップクラスである。排気ガス規制では、もっとも厳しいといわれている「EU StageV」をクリアしていることからも、その技術の高さが窺い知れる。同規制は、欧州におけるノンロード移動機械に搭載されるエンジンに対するもので、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)などの排出を厳しく制限するだけではなく、PN(パティキュレートナンバー、一定単位あたりに含まれる粒子数)も規制の対象としているのだ。
カミンズ社はわが国ではコマツとの関係性が深く、かつてはコマツでライセンス生産が行われていた。また、近年ではいすゞ自動車との提携も行われている。カミンズのエンジンを採用しているのは、加藤製作所だけではない。日立建機・コベルコ建機・タダノなど、多数の建設機械メーカーが自社車輌に採用しているのだ。
このことからも、カミンズのエンジンが高い信頼性を持つことが理解できる。カミンズ社は2025年2月に、「高効率・低排出ガス・複数燃料」を謳った次世代エンジン「2027 X15」を発表。新たな技術の開発に、世界の注目が集まっている。