
この記事をまとめると
■新型レクサスESは次世代電動車ラインアップの第1弾として公開された
■LF-ZC譲りの挑戦的スタイリングや二律背反の要素が各部に盛り込まれている
■多様な要素をシンプルにまとめる難題に挑んだその評価は賛否両論が巻き起こっている
新世代レクサスデザインはプロの目にどう映る?
4月23日、レクサスは上海モーターショーにおいて新型「ES」を世界初公開しました。HEVとBEVを併せもつ次世代電動車ラインアップとして、新しい要素を盛り込んだデザインは早くも賛否両論が飛び交っています。では、そのスタイリングは実際どうなのか? あらためてチェックしてみたいと思います。
●エレガンスでありつつアグレッシブなスタイルを
新型ESのデザインコンセプトは「Clean Tech × Elegance」。ES本来のエレガントさに加え、機能と情緒的な価値を組み合わせようとするもの。レクサスは当初から二律背反をテーマにしていますが、恐らくこのコンセプトもその流れでは? と思われます。
で、具体的な造形としては、2023年のジャパンモビリティショーに出品されたコンセプトカー「LF-ZC」を全面的に反映。「Provocative(挑発) Simplicity」をコンセプトとした同車は、いま見返しても相当チャレンジングな造形ですが、なるほど各要素は新型に投入されているようです。
まず、フロントから相当にアグレッシブで、レクサス最新のスピンドルボディを囲む左右の張り出しはかなりの迫力。その張り出し部分をブラックアウトさせたのは新機軸ですが、グリルを前に突き出させる表現は少し前のトヨタ車のような派手さがあります。
さらに、フード上の切り欠き状のラインは、ほとばしる勢いを感じさせ、文字どおりコンセプトの「挑発」をカタチにした表現ですが、これはチョットやり過ぎかも(笑)。また、上下にL字型のライトを組み合わせた「ツインLシグネチャーランプ」はレクサスらしい先鋭さの表現ですが、「いったいどこまでシャープにするのだろう?」と毎回思うところです。
●異なるふたつの要素を組み合わせる試み
サイドビューでは、まずトランクレスのクーペフォルム自体がLF-ZCを反映したもの。いわゆる4ドアクーペとしては、BMWの4シリーズグランクーペなど先行するライバルがいますが、レクサスとしてその市場に参入するのは面白いと思えます。
で、新しいレクサスとしての特徴が「平面立体嵌合(かんごう)」。嵌合とはふたつの異なるパーツが合わさることを意味しますが、ここではフロントから斜めに切れ上がるショルダーの平面と、リヤフェンダーの大きな張り出しという、異なる面を隣り合わせた独特の造形を指しているようです。
これまたLF-ZCの要素であり、例の二律背反的な考え方でもありますが、よくもこれだけ性質の異なる面を接合させたものだと……。ここはモデラーさんの苦労が想像されますが、多くの要素がありつつ、それでも全体をシンプルにまとめようという意図は感じられます。
ちなみに、フロントフェンダーのエアダクトがなぜ新型に設けられたのかは不明ですが、デザイン的にはキャラクターラインとうまく組み合わされることでスッキリ収まっています。
リヤでは「リヤLシグネチャーランプ」として、サイドまで大きくまわり込んだ細い一文字型ランプや、左右両端に張り出した縦型のランプもLF-ZCのエッセンスを投入したもの。この縦型のランプ周辺はフロントと同様少し前のトヨタ車を想起させる造形で、やはり「挑発」の一環なのか、少し気になるところです。
さて、レクサスの次世代デザイン第1弾として登場した新型ESですが、なるほど機能的でエモーショナルな価値を盛り込んでいることがわかります。LBXなどを見て、今後のレクサスは最近のトヨタ車のようなシプル路線を歩むのか? と思いきや、非常に多くの要素を盛り込みつつ、それを最終的にクリーンにまとめようという超難題にチャレンジするようですね。