
この記事をまとめると
■2024暦年締めでのタイの新車販売台数が前年比で20万台ほど減少した
■バンコク国際モーターショーでは中国メーカーのピックアップトラック展示が目立った
■タイ政府はピックアップトラックの販売不振の救済策として購入支援策を用意している
洪水被害がタイの新車販売台数を直撃
2024暦年締めでのタイにおける新車販売台数は、前年比で20万台ほど落とす深刻な販売不振となった。全体で見ればローン審査の厳格化が響いているのだが、さらにタイ北部での深刻な洪水被害の影響も大きい。洪水被害の影響は地方部のピックアップトラックユーザーを直撃した。被災したことにより、所有するピックアップトラックのローン返済の滞りが多発、当然ながら新車需要も大幅に減ってしまったのである。
トヨタは前年比でみると2024年はハイラックスの派生車種となるハイラックス・ランガが加わったことで、前年比で20%程度のダウンとなったが、いすゞなどほかのブランドのピックアップトラックでは軒並み前年比で40%程度とされる大幅ダウンとなってしまったのである。
そのような状況下、3月下旬から4月上旬に開催された「第46回バンコク国際モーターショー」の会場を見渡すと、中国系ブランドではピックアップトラックの展示が目立っていた。
BYDオート(比亜迪汽車)のシャーク6(PHEV)をはじめ、ジーリー(吉利汽車)もBEVトラック専門ブランド「リダラ」のブースを構えていた。上海汽車系のMGも一般公開日以降にICE(内燃機関)となるエクステンダーを展示していた。
タイといえばピックアップトラックの需要が多く、トヨタといすゞが販売トップ争いを展開し、三菱トライトンもよく売れている。中国メーカーとしては、日本メーカーが強くタイでの販売ボリュームゾーンのカテゴリーなので果敢にこのカテゴリーに挑んでいるといった報道もある。
ヘビーデューティ系SUVとなるが、GWM(長城汽車)のタンクT300ではそれまでガソリンハイブリッドユニットしか搭載していなかったのだが、タイでディーゼルエンジン搭載車を発表した。地元の報道ではピックアップトラックやハード系SUVでメインユニットとなるディーゼルエンジン搭載車をラインアップし、バンコクなど都市部以外の販売拡大を進めたい狙いがあるのではないかとしていた。
また、タイ政府はピックアップトラックの深刻な販売不振の救済策として購入支援策を用意した。
2025年4月1日から2025年12月31日までの期間を設け、台当たり最大150万バーツ(約649万円)の融資保証をするというもの。最長7年間(84回分割払い)保証となり、最初の3年間保証料は無料となり、4年目から7年目の保証料は各年の保証債務の年額1.5%のみとなっている。予算規模は第1フェーズとして50憶バーツ(約216億円)とし、予算を使い切ったあとは追加予算措置が行われるとの報道もある。
もちろん、3月末にバンコクを訪れたがその時点でこの支援策は知れ渡っているので、中国系のなかでピックアップトラックが販売不振にあるなか、あえてピックアップ展示を進めるブランドがあったことは、この支援策に絡めた販売促進を考えていたのかもしれない。
中国系ブランド車は確かに都市部ではかなり注目を浴びているが、そのメインはカローラクロス程度のサイズのコンパクトクロスオーバーSUVスタイルのBEVとなるので、タイ全土を見渡したときはインパクトが薄くなってしまう。
日本車が強みを見せ、なおかつ販売ボリュームゾーンであるピックアップトラックに注目するのは、ビジネスとしてはいたって自然な流れに見えるなか、政府の購入支援が始まったのは好機到来と捉えているのかもしれない。
日本市場を撤退したフォードだが、タイではディーゼルエンジンを搭載したピックアップトラックとその派生SUVで踏ん張ることができている。
ピックアップトラック、そしてディーゼルエンジン。BEVばかりが目立つ中国系ブランドだが、意外なほど“手数”をもっているのである。