
この記事をまとめると
■パッシブ・オンデマンド4WDは「生活四駆」とも呼ばれる簡易4WD
■普段はFF走行で燃費もよく低コストなことから人気を獲得した
■アクティブ方式なら本格4WDに近い性能も期待できる
四駆は四駆でも性格が異なる
「生活よんく」なんて聞くと、生老病死、あるいは物価高、重い税金、介護、学費など「四苦」を連想してしまうかもしれないが、4WD車の「生活四駆」とは、パッシブ・オンデマンド方式、いわゆるスタンバイ4WDのことを指す。
4WDはもともと滑りやすい路面、悪路の走破性を重視して、アメリカのジープやドイツのキューベルバーゲンなど、軍用車がそのパイオニア。これらは、通常2WDで走り、悪路では前輪と後輪をプロペラシャフトで直結してトラクションを稼ぐパートタイム4WDと呼ばれている。いまでもジムニーやランクルなどの本格的なクロカン四駆は、このタイプだ。
もうひとつ、センターデフで前後輪の回転差を差動制御することで、常時4WD化を可能にしたフルタイム4WDもある。スバルのレヴォーグ(2.4リッターモデル)やレクサスLXなどがその代表。スバルの「ACT-4WD」もフルタイム4WDの一種。
そしてこのところ4WDの主流になってきたのが、スタンバイ4WD。スタンバイ4WDは、通常2WDで走行していて、駆動輪のスリップを感知すると自動的に4WDに切り替わるシステムだ。
スタンバイ4WDには、パッシブ・オンデマンド方式とアクティブ・オンデマンド方式があるが、パッシブ・オンデマンド方式はビスカスカップリングが入っていて、前輪と後輪に回転数に差が生じると、遅いほうにより駆動を伝えようと力が働く仕組みになっている。
パッシブ・オンデマンド方式の4WDはほとんどがFFベースなので、通常はFF状態で走り、低ミュー路でフロントがスリップしはじめると、機械的に4WDになる。日常の大半がFFなので、駆動系のロスが少なく、燃費的にも有利で、機構もシンプルなので、重量面でもコスト面でもメリットがあり、普及率が高い4WDとなった。
もっとも、滑りやすい路面でも滑らないのが4WDの目的とするのなら、滑ってからしか4WDにならないパッシブ・オンデマンド方式は、由緒正しい4WDとはいえないのでは? との見かたもあり、本格4WDに対して、パッシブ・オンデマンド方式は「生活四駆」あるいは「なんちゃって4WD」などといった呼ばれかたをすることも……。
ただ、夏タイヤ、スタッドレスタイヤともに高性能化していることを考えると、よほどの深雪やツルツルのミラーバーン、あるいは砂浜などではない限り、パッシブ・オンデマンド4WDでも、走破性に不満を感じることはほとんどない。
また、同じスタンバイ4WDでも、機械式ではなく、電子制御カップリングと各種のセンサーを組み合わせ、滑る予兆を感知して能動的に4WDに切り替わるアクティブ・オンデマンド方式もある。パッシブ・オンデマンド方式の場合、どうしても4WD化するまでのタイムラグが生じるが、アクティブ・オンデマンド4WDであれば2WDで滑り出す前に4WD化しているので、フルタイム4WDに見劣りしないトラクション性能が期待できるのだ。
乗用車ベースで考えるのなら、「生活四駆」どころか、アクティブ・オンデマンド4WDがもっとも賢く、高効率な4WDといえるかもしれない。