
この記事をまとめると
■タイヤはグリップの限界を迎えるとスキール音が発生する
■立体駐車場を走っている低速域でも発生するのは構造上路面が滑りやすいからだ
■異常ではないが音を感知したら速度を控えるほうが安全だ
立体駐車場でタイヤが鳴りまくるワケ
鉄骨で組み上げられた立体駐車場の通路や、その駐車枠への出入りで、タイヤから「キュルキュル」と音が出ることがある。
これはタイヤ騒音のひとつで、スキールという。英語で、squealのスペルとなり、悲鳴を上げるとの意味だ。タイヤから出るスキール音は、サーキットやテストコースなどでタイヤグリップの限界に近づくと発生する騒音でもある。
このときタイヤで何が起きているかというと、トレッド面が路面と接して密着することでグリップを生じているが、あまりに高速でカーブを曲がるような場合、あるいは急ブレーキを踏んで危険回避をしようとする際には、タイヤがそれ以上路面を捉まえきれない状態になって、滑りだしそうになる。そのときトレッドゴムが振動し、音を出す……というのがこの仕組みだ。
つまり、スキールとは、タイヤがグリップを失う前兆の悲鳴ともいえる。
では、低い速度で移動したり、駐車枠への出し入れをしたりしているときも、なぜスキールが出るのか?
立体駐車場は、何台ものクルマの重量を支えなければならないので、柱は鉄骨で頑丈につくられ、その床を分厚いコンクリートで仕上げたのでは、床が重くなりすぎてしまう。そこで、軽量かつ丈夫な合成スラブと呼ばれる材料が使われている。
これは、鋼の板に鉄筋や金網を重ね、コンクリートをかぶせて板の構造としている。鋼の板を用いることで、床を軽く仕上げることができる。
そのうえで、表面のコンクリートを保護するため塗装が施され、それによってアスファルト舗装に比べ若干タイヤが滑りやすくなる。つまり、一般的な舗装路を走っているより早めにタイヤが滑り出す可能性があり、低速でもスキールを発するのだ。
スキール音を耳にしても、まだタイヤはグリップしているので危険はない。だが、駐車場内の通路では無闇に速度を上げないのが無難だろう。
スキールは、タイヤが滑り出す前兆を知らせる騒音なので、タイヤへ必要以上に負担がかかっているわけではなく、タイヤが損傷するような異常ではない。速度に注意するようにとの、運転者への喚起と思えばよい。