
この記事をまとめると
■トヨタとウェイモが自動車運転の分野での業務提携に合意した
■トヨタはこれまで独自で自動運転技術を使った先進運転支援システムを量産化してきた
■新時代に突入した自動運転市場でトヨタがどう動くかに注目だ
トヨタとウェイモの業務提携で自動運転が進化する
まさかこのタイミングで両社が手を組むとは! 自動車産業界では、トヨタとWaymo(以下ウェイモ)との関係について驚きの声が上がっている。トヨタは4月30日、ウェイモと「自動車運転の普及を加速する戦略的パートナーシップの枠組み」で合意したを発表した。
ウェイモは、グーグル(現在の親会社はアルファベット)が独自開発した自動運転技術を独立させた企業。直近では、カリフォルニア州サンフランシスコのベイエリア、ロサンゼルス、アリゾナ州フェニックス、そしてテキサス州オースティンをあわせて毎週25万回以上で運行し、走行距離は数千万マイルに及んでいる。一般的にロボットタクシーと呼ばれる、運転者や運転補助員が同乗しないドライバーレスの状態で走る自動運転サービスだ。
ロボットタクシー事業については、テスラが専用車両の市場導入に向けた準備と並行して、量産車の「モデル3」や「モデルY」を使ったサービスを実験的に始めた。また、中国でも多用な事業者によってロボットタクシーサービスの実用化が進もうとしている。
こうしたニュースをテレビやネットで見て、「日本は自動運転で、世界に大きく遅れをとっている」という印象をもつ人が少なくないだろう。だから、トヨタが世界でも自動運転技術の最先端技術をもつウェイモと手を組んだ、のだと。
大雑把に見れば、確かにそうした見方は間違ってはいない。ただし、日本が自動運転でダメダメだから……、という見方は大きな間違いだ。
時計の針を少し戻すと、アメリカで2010年代半ばに自動運転の実用化に向けた動きが大きくなり始めた。背景には、国防省系の研究機関が2000年代に行った、自動運転コンテストに参加していた画像認識などに関する研究者らが、自動車関連メーカーやIT関連企業に引き抜かれ、次世代の量産技術として研究を進めたことがある。そのうち、グーグルは創業者らが自動運転に乗り気で、積極的に公道での実証実験を行うようになった。
こうした動きに対して、日本政府は「日本が自動車産業の変革に出遅れている」との危機感を抱き、産学官連携の「戦略的イノベーション創造プログラム(通称:SIP)」のひとつとして自動運転を実行に移した。
また、SIPと並行して、経済産業省、および国土交通省が採択する全国各地での実証事業などを行い、日本は自動運転実証大国へ変貌した。都合9年半に渡るSIPでは、自動運転の技術、法務、人材育成など多様な成果を上げた。そのなかで、トヨタも当然、SIPなどと連携している。
また、トヨタ独自でも乗用車と商用車で、自動運転技術を使った先進運転支援システム(ADAS)を量産化してきた。さらに、未来型実験都市「ウーヴンシティ」の稼働準備が最終段階に入っている状況だ。
ところが近年、自動運転技術の方向性が車載のカメラ、レーザー、ライダーなどから得たデータをAI(人工知能)解析するのが主体となり、それを地図情報がサポートするという体系に変わっていった。こうした新技術はアメリカ主導で、中国も独自に開発を進めている。
ロボットタクシー事業がここへきて目立つのは、その影響だ。トヨタとしては、こうした新しい技術領域と、これまで自社で蓄積してきた知見を融合させるため、今回のウェイモとの基本合意に至ったものと考えられる。
新時代に突入した自動運転市場、トヨタがどう動くか注目したい。