
この記事をまとめると
■アストンマーティンの歴史上「DB4GTザガート」は重要な1台として認知されれている
■「DB4GTザガート・サンクションII&III」はDB4GTザガートを模したモデルだ
■あくまでリプロダクションだがメーカーの正式なモデルとして扱われている
伝説の車両を模したレプリカ以上ホンモノ未満
スポーツカーと名乗っていても、ディメンションや構造が「乗用車」だったりするクルマをバッサリ斬ったり、シリアルナンバーのマッチングが絶妙に一致していても、どこかしらレプリカ臭がしたりするビンテージカーなど、真贋の追究を座右に据えるクルマ好きは少なくないかと。
そんなマニアに一考願いたいのが、アストンマーティンDB4GTザガート・サンクションII&IIIにほかなりません。サンクション(Sanction=認可)の名さえつければ、それは正真正銘DB4GTザガートなのか、じつに気になるところです。
アストンマーティンにとってDB4、とりわけカロッツェリアザガートによって軽量で空力特性に優れたボディを架装されたDB4GTザガートほど重要なモデルはないでしょう。なにしろ、1960年から3年の間にわずか19台しか製造されなかったレアモデル。しかも、当時の手作りボディに加え、手工業的チューニングのおかげで各車が少しずつ違った仕様となっているとくれば、後世で価値を生むこと間違いありません。
実際、19台のうち6台だけが製造された左ハンドル仕様車は、数年前に約15億円、右ハンドル仕様は20億円ほどで落札されています。ちなみに、ザガートボディでない吊るしのDB4GTならば4億~5億円程度といいますから、いかに希少価値が認められているかがわかるというもの。
もともとDB4は、アストンマーティンにとって黄金期ともいえるタイミングに作られたもので、それまでの市販車が400台とか500台とかの生産量だったのに対し、約1200台がロールアウトしています。また、台数もさることながら、近代的かつハイパワーだったことから、レースシーンでの活躍も歴代モデルのなかでもトップクラスといえるでしょう。
そんな背景もあって、1980年代に入るとDB4GTザガートの市場価格は急騰。当時としては破格、すなわち数千万円で取り引されるようになったのです。すると、ここに目を付けたリチャード・ウィリアムスという商売人が現れ、「アストンマーティンの工場に残っていたザガート用パーツ」を使って、新たにDB4GTザガートを組み立てることを画策したのでした。