
この記事をまとめると
■航空機メーカーのサーブはクルマの製造も手掛けていた
■「ソネット」はライトウエイトスポーツカーとして生み出された
■初代は試作で終わったがのちに3世代に渡って販売されていた
サーブのライトウェイトスポーツ「ソネット」とは
サーブは航空機メーカーから自動車製造に乗り出した個性派メーカーでしたが、惜しくも2017年には(乗用車)ブランドごと消滅しています。
その出自と同じく個性的なモデルでクルマ好きを楽しませてくれたものですが、スポーツカー作りだけはパッとしませんでした。ソネットというスポーツカーを3モデルにわたって作り上げましたが、なかなか市場に受け入れられず苦杯をなめることしきり。サーブらしく、個性と革新に満ちたソネットを振り返ってみましょう。
ソネットⅠ(1956)
ソネット誕生以前、サーブは93という2サイクルエンジンを積んだFFセダンをリリースしており、これがラリーシーンでかなりの活躍をしていました。そこで、チーフエンジニアだったロルフ・メルデが「さらに軽量なシャシーを作ればもっと勝てる」と考え、2シーター、オープンボディのスポーツタイプを開発することに。
とはいえ、最初は会社の賛同を得ることが難しく、メルデら数人による社外活動となったとか。それでも、航空機メーカーだった強みを生かし、アルミのパイプフレーム、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)のボディと当時としては先進的なクルマづくりを進めていたのです。たとえば、フレームの重量はわずか70kg程度としたほか、93で使用していたエンジンと駆動系を前後逆に配置してFFながらフロントミッドシップというアイディアを駆使しています。
完成車の車重は目論見どおり600kgという軽量に収まり、最高速190km/hを記録しました。これで会社も認めて、2000台の市販計画を立てたものの、レースのレギュレーションが変更されてしまいました。ソネットの活躍が見込めないとされ、試作車が6台作られただけで計画は中止の憂き目に。
1950年代初頭の開発ながら、1960年代のライトウエイトスポーツカーに迫る完成度、後の史家は口をそろえて高評価です。歴史にもしは禁句でしょうが、アルプスやコルチナあたりのラリーに出ていたらと思うと残念でなりません。なお、ソネットとはメルデがスウェーデン語の “Så nätt den är”(英語の “how neat it is”)から命名したとするのが有力な説です(諸説あります)。