
この記事をまとめると
■ホンダのスポーツモデル「タイプR」の歴史は1992年に誕生したNSX-Rに始まる
■「タイプR」はサーキット走行に焦点を当てたストイックなモデルであった
■難コースである「鷹栖プルービンググラウンド」を全開で走り抜けられる性能を有する
ホンダにとってタイプRとは
タイプRとは、ホンダが走行性能を極限まで追求した車種に与えるグレード名である。
最初にタイプRと位置付けられ、名称が与えられたのは、1990年に誕生した2人乗りのミッドシップスポーツカーであるNSXだ。のちに、シビックとインテグラにもタイプRのグレードが設けられている。
NSXにタイプRが設けられたのは、発売から2年後の92年である(当初はNSX-Rの名であった)。もともとアルミ合金の車体で軽さを誇ったNSXに比べさらに軽量化を行い、V型6気筒エンジンは各部品の重さを厳密に管理して調和させ、レーシングエンジン並みと称される回転を生み出した。サスペンションは強化され、快適さを犠牲にしてでも限界性能を高め、その確認にはドイツのニュルブルクリンクへ出かけていくほどであった。
タイプRをひと言で表せば「サーキットベスト」の車種に仕立てられている。「レーシングカーのようだ」と評される背景は、そこにあるだろう。
そもそも、NSXはフェラーリなど欧州のミッドシップスポーツに比べ、独自の価値を与えたホンダ流のミッドシップスポーツカーを目指して開発された。では、独創に富んだ、いままでにない世界第一級のスポーツカーとはどんなクルマか?
視界の悪さ、窮屈な運転姿勢、癖のある操縦性というような、速さのために犠牲にされていた運転者への我慢から解放するスポーツカーであることを、NSXは目指した。言葉にすると、「車両中心から人間中心へ」となる。人間中心の思想は、ホンダが創業から貫いてきた製品作りの根幹である。
一方、従来の競合スポーツカーを経験した人からは、何か違う、どこか物足りないといった印象をNSXに持ったかもしれない。そこで、日常性を離れ、サーキットベストを目指したのがタイプRになる。おのずと、レーシングカーに通じる乗り味に近づく。