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もしや2倍の速度で空気が入る!? エアバルブが2つあるホイールってどういうシロモノ?

もしや2倍の速度で空気が入る!? エアバルブが2つあるホイールってどういうシロモノ?

この記事をまとめると

■ツインエアバルブを採用したホイールがある

■ツインエアバルブは片方が充填用(イン)でもう片方が抜き(アウト)用

■窒素ガス充填が少数派になってツインエアバルブのホイールもメジャーとはならなかった

ひとつのホイールにふたつ装備されたエアバルブの存在意義

 ツインカムにツインターボ、ツインクラッチ、ツインマフラー(デュアルマフラー)などなど、クルマの部品なんてものは、一歩間違えるとシングルよりもツイン、ツインよりもトリプルと数が増えたほうが上位モデルといったイメージがあるかもしれないが(実際はそうとは限らない)、じつはホイールにも「ツインエアバルブ」を採用したレアな製品がいくつかある。

 タイヤの空気圧を調整するエアバルブは、通常、1本のホイールにひとつ用意されているが、「ツインエアバルブ」のホイールは、そのエアバルブが1本のホイールにふたつ付いたシロモノだ。何のために、エアバルブがふたつあるの? ひとつはスペア??? と謎に思うだろうが、答えは片方が充填用(イン)で、もう片方が抜き(アウト)用。

 これは約20年前に流行した、(タイヤへの)窒素充填と関連がある。窒素ガスは酸素に比べて分子が大きいため、タイヤの内部から外へ抜けにくく、不活性ガスなので酸化反応による錆びを防ぎ、タイヤやホイールの劣化を防ぐメリットがある。

 そして、最大のメリットとして挙げられるのは、窒素ガスにはほとんど水分を含まない点(生成される過程で水分が除去される)。普通のコンプレッサーでは、大気を圧縮してエアを充填しているわけだが、大気には一定量の湿気=水分が含まれている。多くの物質は温められると体積が膨張するが、水はその膨張率が突出していて、液体から気体に変わると体積が1700倍にも膨張する(水は4℃のときに一番体積が小さく、固体化=氷になると約10%大きくなる)。

 レースの世界では、タイヤの空気圧のわずかな違いで、勝敗、タイムを左右するので、この大気中の空気が一番厄介。わずかでも水蒸気が含まれることで膨張率が予測しづらくなるので、2000年頃は空気ではなく窒素ガスを充填するのが主流になった。蛇足だが、大気中の78.1%は窒素(容積比)で、酸素が21.0%、次に多いのは水蒸気(量は不定)とされている。市販車でもその影響を受けて、窒素ガスを充填するのが流行り出したのは、知っている人も多いだろう。

 この窒素ガスを入れるときに、これまで入っていた空気を抜いて、窒素を入れ直さなければならない。その際、窒素ガスの充填率を高めるためには、エアを抜いて窒素ガスを入れる作業を4~5回繰り返す必要があった。

 その作業性を高めるために開発されたのが、ツインエアバルブのホイール。窒素ガスを入れるときには、ひとつのエアバルブを開放し、もうひとつのバルブから窒素を充填することで、充填効率を向上させるのが狙い。

 エンケイのGTC01やNT-03、無限のXJ ホイールなどがその代表だ。ふたつのバルブは、隣り合うようにレイアウトされているものが多かったが、無限のXJは、対角上にエアバルブが配されているのが特徴だった(タイヤをホイールに組む際、タイヤの横の黄色い印=軽点をエアバルブの位置に合わせ、バルブの重さと相殺し、バランスウエイトを減らすのがセオリーだが、ツインエアバルブのホイールではどうしていたのだろう???)。

 のちにレース界では、専用のエアドライヤーを使って強制的に大気を乾燥させた「ドライエア」をタイヤに充填するのが主流になり、タイヤに窒素ガスを充填することが少数派になってしまったために、ツインエアバルブのホイールもメジャーにならずに今日に至っている。

 しかし、デザイン的にはかなり個性を主張できるので、興味がある人はいまのうちにツインエアバルブのホイールを確保しておくといいかもしれない⁉

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