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海外に比べてプロ意識の高い日本のタクシー運転士……もこの先は変わる? 人手不足とDX化で職人技が失われる可能性 (2/2ページ)

海外に比べてプロ意識の高い日本のタクシー運転士……もこの先は変わる? 人手不足とDX化で職人技が失われる可能性

この記事をまとめると

■プロ運転士のなかにはプライドからカーナビを使わない人も少なくない

■働き手不足を背景にDX化が進みカーナビ導入も避けられない流れにある

■経験や誇りとテクノロジー活用の折り合いが今後の課題となっている

プロの誇りとしてナビを使わないドライバーも多いが……

 先日運転士(旅客輸送関係)に仕事で話を聞く機会があった。その時「みなさんの自家用車にも当たり前のようにカーナビが装着されているかと思いますが……」と聞いた途端、相手となるプロドライバーである運転士ふたりのうちひとりの表情がみるみるこわばってきた。

 そして「私どもはプロです。プロのプライドとしてプライベートでもカーナビに頼った運転をするつもりはないので装着していません」といわれてしまった。もうひとりの運転士は「私はスマホでグーグルマップをたまに使うぐらいです」とのことだったので、「プロドライバーのおふたりに大変失礼な質問をしました」と詫びを入れさせてもらった。

 いまどきのタクシーではカーナビが装着されているのは当たり前であり、乗客自らが「カーナビで検索して目的地に向かってほしい」とリクエストしてくることも珍しくなくなっている。しかし、タクシーにカーナビが装着され始めたころは、「プロの運転士なのにカーナビに頼るのか」と乗客からクレームがつくこともあった。また、当時は運転士が自己負担して車両に取り付けることもあったのだが、お決まりの「目的地周辺なので案内を終了します」となってしまい、とてもタクシーでは使える代物ではなかった。

 そのあとデジタル配車システムなどが導入されると、一部裏道をトレースするような「タクシー専用カーナビ」をタクシー会社が導入するようになった。電話で配車要請を受け、迎え先の近くにいるタクシーに配車要請が行われ、車内装着のカーナビに迎え先までのルートが自動的に案内されるといった仕掛けのものもあった。

 当時タクシー需要は右肩下がりに落ち込んでおり、それでも利用するひとはタクシーのヘビーユーザーでもあり、ベテラン運転士しか知らないような裏道を熟知しているケースも多く、カーナビで検索して目的地に向かうと、「遠まわりしている!」などとトラブルになることもあった。当時はカーナビがあっても参考程度に留めるように新人運転士に教育していたそうだ。

 路線バスは都市内路線、都市間を結ぶ高速路線問わずに走る道、つまり路線が決まっているので原則カーナビは必要ないが、貸切(観光)バスではベテランとはいえ初めて運行するルートもあるので、そんな時のためにカーナビがあってもいいのではないかと思うのだが、一部のバス専用カーナビアプリ以外では、バスが通れない狭い道や、バスが通過できない高さのガード下などを案内してしまうカーナビが大半なので「頼ることができない」という点でもカーナビはほぼ装着されていない。

 たとえば観光バスの運転士のなかでも路線バスも運行しているバス事業者では、路線バスで経験を積んでから観光バスへという流れもあるほど、バス運転士でもプロ中のプロが運転することが多い。観光バスのみの事業者でも、ベテランともなれば、車庫のある都市圏なら知らない道がないほどに経験に基づいた豊富な知識量があるので、カーナビを必要としなかったのである。

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