
この記事をまとめると
■2004年にクライスラー製の幻のスーパーカーとして「ME4-12」が発表された
■CFRPモノコックやV12クワッドターボを盛り込み最高速400km/hを狙った革新作
■2025年に100周年記念モデルとして復活の噂があがっている
当時最高のエンジニアリングを集結させた意欲作
2004年の1月にアメリカのミシガン州デトロイトで開催された北米国際自動車ショーで、クライスラーから1台のスーパースポーツコンセプトカーが発表されたことを覚えている人はどれだけいるだろうか。「ME4-12」とネーミングされたモデルがそれだ。
当時のクライスラーは、ドイツのダイムラーとともにさらなる成長を目指して、ダイムラー・クライスラーという巨大なグループを組織する立場にあったが、ME4-12はまさにその事情を物語る革新的なコンセプトカーだった。
ME4-12の開発プロジェクトを主導したのは、かつてダイムラー・ベンツでエリートコースを歩み、その後メルセデスAMGの社長に就任した人物。ここでの実績を高く評価されてダイムラー・クライスラーの設立後に、クライスラーの最高経営責任者に抜擢されるに至った、ヴォルフガング・ベーンハードだ。
クライスラーというブランドのバリューをさらに高めるためには、高性能なスーパースポーツを市場に投じることこそが最大のプロモーションになると彼は考え、ダイムラー・クライスラーがもつ組織力を最大限に活用することでME4-12を生み出したのである。
ME4-12の基本構造体はCFRPとアルミニウムハニカム材からなるモノコックタブだ。その前後にはクロームモリブデン鋼で成型されたサブフレームが組み合わされ、リヤサブフレーム上にはメルセデスAMGによってME4-12のために開発された6000ccの排気量をもつオールアルミニウム製のV型12気筒DOHC48バルブエンジンが搭載されている。
このエンジンに使用される構成部品は、レースカーのそれと同水準の工作精度のもとで製作されたもの。ちなみにME4-12というネーミングは、このV型12気筒エンジンに4基のターボチャージャーが組み合わされることに由来する。注目の最高出力と最大トルクは、それぞれ850馬力、1150Nmという数字である。
ミッションはダブルウエイトクラッチテクノロジーという独自の技術を採用したリカルド製の7速ATで、ここから出力されるトルクは後輪にのみ伝達される仕組みだ。