
この記事をまとめると
■横浜ゴムがスタッドレスタイヤ「アイスガード8」を発売した
■アイスガード8は氷上性能・雪上性能・ウエット性能などほぼすべての性能が向上
■氷上と雪上でアイスガード8に試乗して進化した性能を体感した
ヨコハマのスタッドレスが「アイスガード8」に進化
タイヤっていうのは難しい。だって、どれもこれもが似たような黒い輪っかで、見ただけだとそれがいいモノなのかどうかがわからない。ネットとかで説明書きを見ても、「ブロック」だとか「パターン」だとか「コンパウンド」だとかは何となく想像できても、「サイプ」だとか「ラグ」だとかいわれても、それってどういうこと? だったりするし。
何であってもそうなのだけど、専門分野で使われる言葉は門外漢には耳慣れないし、専門家がWEBなどを活用して門外漢にマジメに説明しようとしても、そもそも知識の蓄積の度合いがまったく違うから、お互いに悪気なく平行線を辿ってしまうような事態にもなる。頭で理解しようとすると、マジメに勉強した人以外にとっては、ホントにむずかしいのだ。
その反面、タイヤって意外とわかりやすい。感覚をちょっと研ぎ澄ませたつもりになって実際に真剣な気もちで体験してみると、メーカーが意図した進化だとか違いみたいなものが、思ってたよりわかったりするものだ。理屈じゃなくて、身体で。
その代表例のような新製品が、この9月1日に発売となった横浜ゴムのスタッドレスタイヤ、アイスガード8。2021年に投入されて以来、とりわけ氷上性能において評価が高かったアイスガード7の進化版だ。
アナウンスによれば、氷上性能、雪上性能、ウエット性能、ドライ性能、そして静粛性など、ほぼ全面的にアイスガード7より向上していて、低燃費性や耐摩耗性は同等レベルということだが、とりわけ目覚ましいのは氷上性能と静粛性。スタッドレスタイヤの分野では、ここ20年ほどはユーザーがとりわけ凍結路でのパフォーマンスを重視する傾向が強く、従来のアイスガード7でも十分といえる性能を確保してきたけれど、その進化版では氷上制動性能を14%、氷上旋回性能では13%も向上させているのだという。また、スタッドレスタイヤの弱点といえる、とくにドライ路面における走行音のやかましさ。それについてはロードノイズで22%減、パターンノイズで21%減と、大幅にツメてきたようだ。
いったいどこにどう手を入れて、ただでさえ評価の高かったアイスガード7から大きく進化させたのか。マニアックな人には食い足りないだろうけど、めちゃめちゃ簡単に説明すると……。
まず中心にあるのは、「冬テック」と名づけられた新しいコンセプトだ。これは一見ピタリと氷の表面に密着してるように思えるタイヤも、ミクロのレベルで見ると僕たちが想像する以上に接触が希薄、という事実に基づいたものだ。
タイヤのゴムの氷は圧着されてるわけじゃなく、水の膜などに阻まれて斑になった点と点で接触しているに過ぎないのだ。その接触する点の密度を可能な限り高めよう、というのがひとつ。さらに、マクロのレベルで見て、接触する点を稼ぎ出すための面積を可能な限り拡大しよう、というのがもうひとつ。つまりゴムと氷が接触する「密度」と「面積」の両方を最大化して氷上性能を高めよう、という考え方だ。
それを実現させるためにさまざまな技術が開発され、投入されてるわけだが、そのうちのひとつが「冬ピタ吸水ゴム」という新たな専用コンパウンドの採用だ。「水膜バスター」というミクロのレベルの新しい吸水素材を高密度に配合することで、ゴムと氷の接触を阻害する水を可能な限り排除。吸水量を先代から8%向上させることで、接触の密度を63%も増加させている。また、このコンパウンドに、これまたミクロのレベルのエッジスティックを配合することで引っ掻き効果を高め、トラクション性能も稼ぎ出している。
接触の面積に関しては、トレッドの幅を広げることで、先代比で8%増加させている。また、ベルト状のブロックなどパターン各部を大型化することで、ブロック剛性を7%引き上げている。
このトレッドにはもうひとつ無視のできない工夫があって、横溝を増やしたり斜めの溝を配置したり縦溝の容量を拡大したり、さらには横溝の変形を防ぐために隣接するところに潰れやすい別の溝を設けたりすることで、エッジの量を4%増加させつつエッジ効果を高め、排雪性や排水性も向上させている。氷上性能をのみならず、しっかりと雪上性能も引き上げてるわけだ。氷上では路面への設置面積が大きいほうがグリップを高められるけど、逆に雪上では溝が多くたくさん引っかかる方が有利。そうした相反する部分を発想と技術力でカバーしてることも賞賛すべきだろう。
ほかにもさまざまな新技術や新素材などが投入されているのだが、それらが大きなトピックといえる部分。すべてを並べ立てると絵巻物のようになってしまうので割愛させていただき、実際に体感した印象に移ることにしよう。