
この記事をまとめると
■BMWは横3人乗りのシティコミューターの「Z13」を本気で開発していた
■Z13はBMWバイクの1.2リッター水平対向エンジンをミッドシップ搭載していた
■BMWがローバーを買収したことによりZ13はキャンセルされることになった
BMWがガチで開発していたシティカー
BMWがローバーを買収して新たなミニを作っていなければ、このZ13と呼ばれる風変わりなコンパクトカーが生産されていたかもしれません。マクラーレンF1と同じく横3人乗り、BMW製バイクから拝借したエンジン、そして広いおでこをもった奇妙なデザイン。じつはBMWがガチで作ったシティコミューターだったのです。
1990年代初頭、BMWグループのシンクタンクであるBMW テヒニクは、燃費のいいシティカーの開発という任務を与えられました。この数年前にポルシェから移籍してきたエンジニア、ロバート・パウエルが発案したもので、彼はBMW 5シリーズで通勤するうちに「もっとコンパクトで都市部で扱いやすいクルマが欲しい」と考えていたそうです。
当初の計画では水冷4気筒水平対向エンジンを搭載する予定でしたが、BMWの首脳陣は開発コストに難色を示したため、オートバイ用4気筒エンジンが流用されることに。しかし、ここでパウエルがエンジンをミッドシップ化することを思いつきます。「フロントセクションには補機類を配置することでクラッシャブルゾーンとする」ためだとされ、BMWにとってM1以来のミッドシップカーとして計画されたのです。
また、開発の時期がマクラーレンF1といくらか重なることもZ13の生い立ちに影響を与えました。というのも、ドライバーを車体センターに置き、背後左右に2席を設けるという3座レイアウトはマクラーレンF1とまったく同じ。ただし、シティコミューターだけあってZ13の場合は、「ドライバーは正しい視界で安全性や取りまわしが有利となり、後席はレッグスペースの確保ができて荷物スペースも広がる」といった理由付けがなされています。
もっとも、パウエルはシティコミューターはシングルシーターで構わないと考えていたようですが、首脳陣からさすがに商品性が高まらないと反対された模様。また、首脳陣は社内デザインも気に入らなかったようで、スタイリングはどうやらイタリアのプロトタイプメーカー「ストーラ」に依頼されました。ちなみに、彼らの作品は実走可能モデルが多く、メルセデス・ベンツ・ヴィジョンSLR、フェラーリ599GTBフィオラノ、あるいはフィスカー・トラモント(17台を生産)なども走行可能なエンジニアリングモデルでした。