
この記事をまとめると
■ランザンテはル・マン24時間レースでの総合優勝チームを支えていた
■マクラーレンが所有するF1エンジン搭載の911を自社でも作るのが夢だった
■製作の許可を得てマクラーレンのF1エンジン搭載の911を11台作り上げ販売した
レースエンジニアの名手が怪物級の911を作り上げた
イギリスのハンプシャー州ピータースフィールドに本社を構えるランザンテの名は、ハイパーカーやモータースポーツの世界に詳しいエンスージアストにはよく知られているところだ。その成功の背景には、もちろん彼らがもつ卓越したエンジニアリングの能力があるわけだが、同時にマクラーレンとの間で長年にわたって築かれた、モータースポーツにおける強いパートナーシップがあることを忘れてはならない。
そのもっとも象徴的な例は1995年のル・マン24時間レース。このレースで総合優勝を飾った、59のゼッケンを掲げたマクラーレン・F1GTRのセットアップやピットワークを担当していたのがランザンテだった。
先日イギリスで開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、ランザンテはこのF1GTRをオマージュしたオリジナルのハイパーカー、「95-59」を発表しているが、これもまたマクラーレンのカーボンモノコックを、かつてのF1と同様に3シーター用に改良して使用しているほか。ボディデザインもマクラーレンで数々の作品を残したポール・ハウスに委ねるなど、ランザンテとマクラーレンの良好な関係を象徴している作品だった。
ランザンテはまた、近年さまざまなメーカーが進出を果たしているレストモッドのジャンルでも、熱狂的なマニアから熱い視線を注がれる存在でもある。
多くのメーカーがそうであるように、ランザンテもまたレストモッドの素材にポルシェ911を選んでいるが、同社を率いるディーン・ランザンテが最初に望んだのは、マクラーレンのレーシング部門に保管されていた、1台の930型911ターボを購入することだった。それには1983年末からマクラーレンのF1マシン、MP4/2に使用された1.5リッターのV型6気筒ツインターボ、通称TAGポルシェ「TTE P01」エンジンが搭載されており、それをロードモデルとすることが彼の夢だったのだ。