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かつては「捨て駒」用のグレードまで存在した! かつて豊富だったクルマのグレードが減った理由といま再び増えつつあるワケ

かつては「捨て駒」用のグレードまで存在した! かつて豊富だったクルマのグレードが減った理由といま再び増えつつあるワケ

この記事をまとめると

■バブル期の国産車はグレード数・エンジンバリエーションが非常に豊富だった

■現在は車種数の増加や開発費高騰や電動化対応によりグレードが厳選されている

■今後は「車種を減らしてグレードを増やす」流れが強まりそうだ


いまでは考えられないほど多様なバリエーション

 昔のクルマはグレードの数が多かった。たとえば1991年に発売された4代目三菱ミラージュには、4ドアセダンと3ドアハッチバックがあり、エンジンは、直列4気筒シングルカムの1.3リッターと1.5リッター、直列4気筒ツインカムの1.5リッターと1.6リッター、V型6気筒ツインカムの1.6リッター、直列4気筒1.8リッターディーゼルターボもあった。

 さらに姉妹車のランサーには、直列4気筒1.8リッターガソリンターボも用意された。とりわけ1.6リッターに直列4気筒とV型6気筒の両方を用意するのが注目された。

 エンジンの種類がここまで豊富ならグレードの数も増える。ミラージュとランサーは、膨大なバリエーションをそろえた。

 この時代にグレードが多かった背景には複数の理由がある。まず、いまに比べて景気がよく、クルマの販売台数も増えていたことだ。4代目ミラージュが登場した前年の1990年には、国内販売台数は未曾有の778万台に達している。ちなみに2024年は442万台だから、1990年の57%に留まる。

 また、当時は車種が少なかった。ミニバンも本格的な普及が始まるのは1990年代の中盤だ。SUVは、当時は悪路向けの三菱パジェロ、日産テラノ、トヨタ・ハイラックスサーフなどはあったが、いまのように軽自動車からLサイズまで幅広く揃えてはいなかった。

 その代わりいまは、セダン/ワゴン/クーペが激減したが、1990年の50%少々という国内販売規模を考えると、車種は多い。この影響でグレードが減った。

 このほかにも理由はある。いまの車両開発では、電動化や自動運転などに力を入れるから、1車種当たりの開発費用を抑えねばならない。ハイブリッドを搭載する車種も増えたから、エンジン排気量などの種類は少なくしたい。

 そこでグレードも厳選されている。さらに、いまの新車需要は約80%が乗り替えに基づくから、売れ筋グレードもわかっている。前述のミラージュのように、V型6気筒の1.6リッターを用意して、売れずに失敗するようなこともない。

 以前は価格を単純に安く見せるためのグレードを設定することもあったが、いまはムダと判断されて削られた。当時、上級車種の商品企画担当者から「高級車には売れなくても安価なグレードが必要だ」といわれた。理由を尋ねると「お客さまが一番安いグレードを買いたくないから」。つまり、「自分よりも下がいる」と思わせるためのグレードだ。話を聞いて悲しい気分になった。

 以上のような紆余曲折を経て、いまはグレードが減っている。しかし、今後は再び増える傾向になりそうだ。

 その理由は、日本仕様の車両開発に費やせる予算が減り、車種を抑えるようになるからだ。この動向を明確に打ち出したのが日産で、2025年8月に実施されたエクストレイルのマイナーチェンジでは、グレードの選択肢を増やした。標準グレードに加えて、オフロード感覚をさらに強めたロッククリーク、ラグジュアリー指向のオーテックアドバンスドパッケージ、スポーティなNISMOをそろえる。車種を増やすのに比べると、グレードの拡大は低コストで済むためだ。

 ノートシリーズも標準車のノート、ラグジュアリー指向のノートオーラ、スポーティなノートオーラNISMO、SUV感覚のノートオーテッククロスオーバーがある。2026年の末に登場すると見られるエルグランドも、標準グレード、ラグジュアリー指向、スポーティ指向、SUV指向までそろえるだろう。

 以上のように今後の日本仕様は、合理化のために「車種を減らしてグレードは増やす」クルマ作りを行う。各車種の魅力をフルに活用するわけだ。

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