
この記事をまとめると
■4WDは状況で切り替えるパートタイム式と常時駆動のフルタイム式に大別される
■フルタイム式ではセンターデフが前後回転差を吸収し安定した走行を実現する
■機械式やビスカス、多板クラッチ式など多様なセンターデフが進化の要となっている
4WDの区別と仕組みを総ざらい
大まかにわけて、4WD車には2タイプがあることをご存じだろうか。パートタイム4WDとフルタイム4WDである。呼んで字のごとし、パートタイム4WDタイムは暫定的、ある条件下で4WDとなる方式に対し、フルタイム4WDは常時4WD(常に4輪に駆動力が伝わっている状態)で走る方式だ。
4WDのおさらいになるが、パートタイム4WDとフルタイム4WDの違いを構造面から見てみよう。まず、パートタイム4WD方式だが、この方式はエンジン出力がトランスファーを介して前輪と後輪の駆動軸に直接伝えられる方式で、そのままだと常時4WD、つまりフルタイム4WDとなる。
しかし、エンジン出力が直接前後の駆動軸(アクスル)に伝わる状態だと、旋回時に前後のタイヤに回転差(走行距離差)が生じることになる。これは2輪駆動の左右輪間で起こる現象と同じで、左右の駆動輪間で生じる回転差を吸収するためデファレンシャルギヤ(デフ)が設けられている。
では、パートタイム式4WDの場合、前後間で生じる回転差をどうやって吸収するのだろうか? 答えは、吸収しないのである。もともと4WD方式はパートタイム式ではじまっていて、大きく普及したのは第2次世界大戦中の軍用車、米陸軍のウイリス社製ジープがその発端となっている。路面μが低く不整地走行が主体の戦場で、2WD(2輪駆動、主にFR)の走破能力ではなにかと不都合が生じてしまう。
路面μの低い不整地を問題ともせず走破するには、前後左右4つのタイヤで駆動するほうが2つのタイヤで走る2WDより圧倒的に走破能力は高くなる。高い機動力が要求される戦場で、車両の走りがままならないのは文字どおり死活問題である。
4輪駆動方式のジープは、こうした発想で生まれた車両だが、では、エンジン出力に対して前後軸が直結された4WD方式では旋回時に生じる回転差は問題にならないのか? これが低μ路ではほとんど問題にならないのである。というのは、前後(厳密にいえば4輪)で生じる回転差は、低μ路ゆえに生じるタイヤのスリップによって問題視しなくてもよくなっているからだ。泥濘路、積雪路、氷雪路などの走行を考えてもらえばわかりやすいと思う。
しかし、タイヤのグリップ力が高くなる舗装路での旋回走行の場合はどうだろうか? タイヤのスリップが生じにくいため、さすがにこれでは都合が悪い。前後間で生じた回転差は、ギクシャクとしたスティックスリップのかたちで現れる。路面μの高い舗装路走行時は、前後直結状態の4WD方式は都合が悪いのだ。幸い、路面が平坦で高い駆動力が不用な舗装路走行の場合は2輪駆動で走ればよいわけで、もう一方の駆動軸(大半はFR方式がベース)となる前輪軸への出力を切り離せばよいことになる。
いい換えれば、通常は前後を切り離した状態の2WDで走り、高い駆動力が必要になった場合にだけ4WDとなればよいわけで、駆動出力の切り離し(切り替え)によって2WDと4WDを使いわけることからパートタイム4WD方式と呼ばれている。