
この記事をまとめると
■自動車メーカーは限定車を設定することがある
■台数を限定とする背景には価格や特別に付随するパーツの供給体制による事情がある
■期間限定として消費者の購買意欲を掻き立てるために設定される場合もある
限定車の存在意義とは
現行マツダ・ロードスターのソフトトップは、従来は直列4気筒1.5リッターエンジンのみを搭載したが、2025年10月に、ソフトトップにも2リッターエンジン搭載車を用意した。すべて限定販売で、マツダスピリットレーシングロードスターは2200台、この仕様をベースとし、よりストイックなチューニングが施された12Rは200台の限定となった。
少し遡ると、2025年9月に発表されたトヨタGR86のRZイエローリミテッドも300台限定販売だ。11月ごろに抽選販売を実施するという。
このほかスバルWRX S4は、台数を限定した特別仕様車を設定することが多い。直近ではS210が2025年5月から6月に500台限定で発売された。
このような限定車が登場する背景はいろいろある。
まずその特別仕様車が、文字どおり特別な内容で、数多く売るのが困難な場合だ。S210の価格は870万円だから、WRX S4 スポーツR EX(502万7000円)に比べて370万円近く高い。「500台限定」とした根拠をメーカーに尋ねると「内容や価格も考えれば、販売規模として、500台の限定生産が妥当だと考えた」という返答もあった。
また、このような特別仕様車になると、生産個数の少ない特殊なパーツや塗料も使われる。台数を限定する以前に、特殊なパーツや塗料の生産が、1カ月に1000台を超えるような大量注文に対応できないという事情も聞かれる。
このほか、台数を限定して短期間だけ売られる特別な商品だとアピールし、購買意欲を誘発する狙いもある。もっとも多く見られるのは、特別仕様車に専用のボディカラーを設定して、価格を高めるような売り方だ。
たとえば2025年9月に発売された新型プレリュードは、専用2トーンボディカラーのホンダオン・リミテッドエディションを限定受注して、価格はモノトーンの標準グレードに比べて30万300円高かった。フェアレディZなども含めて、スポーツカーのニューモデルが登場したときは、割安とはいえない特別仕様車を設定することも珍しくない。
台数の限定ではなく、スキーやマリンスポーツなどをテーマに、季節ごとに設定する特別仕様車もある。これも次の季節が来るまでに売り切れる台数を設定しており、季節限定は、実質的に台数限定といえるだろう。