
この記事をまとめると
■レクサスが「SENSES−五感で感じるLEXUS体験」というイベントを開催
■会場内には新型ESとRZがもち込まれた
■新型ESに関しては2026年春ごろの国内販売を目指して調整中だ
話題のセダンがついに上陸
レクサスが日本導入20周年を8月に迎えるとともに、ジャパンモビリティショー2025が10月末より開催されるのを控えた10月1日。レクサスの今後の方向性を示す報道関係者向けイベント「SENSES−五感で感じるLEXUS体験」が都内で開催された。
あらゆる消費の重点が「モノ」から「コト」へシフトしたといわれて久しいが、こと電動化によってコモディティ(汎用品)化が進みつつあるクルマ、そのなかでも高級車ではより一層、「モノ」=性能ではなく「コト」=体験価値が重要視されるようになる。
1989年に北米市場で生まれ、高いコストパフォーマンスと静粛性、内外装の質感で世界中に衝撃を与えた、フラッグシップFRセダンの初代「LS」(日本名トヨタ・セルシオ)をはじめ、時代の変化に合わせ高級車市場に新しい価値をもたらしてきたレクサスも、もちろん例外ではない。
トヨタグループ全体ではあらゆるパワートレインをカバーする「マルチパスウェイ戦略」を採るものの、電動化技術を使って新たな「コト」を生み出す役割を担うレクサスにはむしろ、新たな体験価値の創出を先導することが、トヨタ内外から求められている。
そうした背景のなかで、今後のレクサスの核となるであろう新たなブランド価値が「五感を刺激する体験」。味覚、視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった五感(=SENSES)で、ユーザーの豊かな時間をデザインする方針が掲げられた。これらを具現化する先駆者的存在が、3月に発表されたBEV(バッテリー式電気自動車)専用ミドルラージSUV「RZ」の大幅改良モデルと、4月に世界初公開された新型8代目となるミドルラージFFセダン「ES」ということになる。
今回のイベントでは両モデルの実車が日本初公開されるとともに、開発エンジニアやデザイナーのトークセッションも実施。さらには五感を刺激する体験型コンテンツも用意された。
そのなかで新型ESは、GA-Kプラットフォームを先代より踏襲しつつも、開発当初よりBEVの設定が計画されていたため、全高を先代より115mmアップし、ホイールベース間にバッテリーを搭載しつつ、乗り降りしやすい着座位置の高さとヘッドクリアランスを確保。
また、初代ES(日本名トヨタ・カムリプロミネント)以来堅持されているエレガントでスリークなスタイルを維持すべく、全長を165mm、全幅を55mm、ホイールベースを80mm拡大した。
その結果、全長×全幅×全高=5140×1920×1560mm、ホイールベース2950mmという、全幅と全高では現行LSを上まわるサイズになったことが、新型ESのデザインを手がけた熊井弥彦プロジェクトチーフデザイナーから明かされている。
なお、新型ESのデザイン自体は、高級セダンの王道だった先代に対し、新型はシンプルかつモダン、そして近未来的なものとなっている。その狙いを千足浩平チーフエンジニアに問うと、「私自身2年間過ごした中国の市場が、コロナ禍を経て大きく変化するなか、なかなか盛り上がらないセダンの市場へ次のESをどのような形で投入するかを考え、グローバルで競争力のあるセダンを作りたい、もう1回セダンを再定義したいという想いから始まりました。そのためには中国で戦えるセダンを作り、それをグローバルに展開しようということになったのです」と、中国市場を主眼として開発されたことを明言。
その一方、「結果としてデザインがガラリと変わったのですが、これは自分たちの競争環境を変えないための、ESがESであり続けるための変化です。セダン市場が縮小するなかでも、ESを廃止するという選択肢はまったくありませんでした。それは、私自身セダンが好きというのもありますが、クルマの基本系はセダンだと。人が乗るキャビンがちゃんと独立していて、乗り心地も静粛性も高められ、重心も低く構えているので、長距離を走ろうと思ったら、もっとも安定感をもって安心して疲れなく走り続けられるという、工学的に合理的なパッケージングがセダンなんですね」と、セダンに対する熱い想いとエンジニアとしての合理的見解を同時に語っていたのが、非常に印象的だった。
