
この記事をまとめると
■トランプ政権下における日本からの輸出品への関税は15%の追加関税で落ち着いた
■欧州や韓国などからの輸出品への追加関税も日本同様の15%となった
■自動車に関するトランプ関税は日米間だけでなくUSMCAも含めてその動向を注視したい
欧州や韓国などもじつは15%で決着していた
次の首相が高市早苗氏に決まり、高市政権が誕生したが、今後、どのような成果を上げてくれるのかその手腕に期待したい。
一方、その前の石破政権を振り返ると、その大きな成果はトランプ関税への対応だった。赤沢亮正経済再生大臣は9月4日、米ワシントンの商務省でトランプ関税に関する合意についての文書に署名。そのなかで、自動車や医薬品など日本からアメリカへの輸出品については15%と決着。自動車は当初、既存の2.5%に25%の追加関税で合計27.5%だった。
いわゆるトランプ関税とは、主に1962年通商拡大法232条を指す。一般的には「232条」と呼ばれる。特定製品の輸入の拡大がアメリカの国家安全保障に脅威を及ぼすと商務長官が判断した場合、追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を大統領に認めている。トランプ大統領は「232条」を盾に、アメリカ国内産業を強靭化を図ると説明してきた。その上で、トランプ関税と引き換えに国や地域からアメリカ対して優位な通商条件を引き出す戦略だ。こうした交渉をディール(取引)と呼んだ。
たとえば、日米間通商交渉では最終的に、日本がアメリカに対して5500億ドル(約80兆円)もの巨額投資を行うことが盛り込まれている。半導体など次世代技術に関する投資が予想されるが、投資の時期についてなどの詳細については明らかになっていない。
では、他の国や地域からアメリカへの自動車関税はどうなっているのか?
アメリカでの輸入車は、乗用車では日本がトヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スバル・三菱などで、ドイツがメルセデス・ベンツ、BMW、VW、アウディなど。イタリアがフェラーリやランボルギーニ。また、韓国ヒョンデとKIAの販売数が多い。
これらを関税交渉の履歴で見ると、EU(欧州連合)に対しては7月28日にトランプ関税引き下げで合意した。それよると、232条に基づいて25%の追加関税としていたものを15%とした。韓国については、7月31日の時点で自動車関税が25%から15%に引き下げられることが明らかになっている。このように、日韓欧でのトランプ関税は15%で決着した。
一方、今後の交渉が注目されるのがアメリカ・メキシコ・カナダ(USMCA)だ。北米域内貿易を活発化させるために2020年に発効した3カ国間協定のことで、日本メーカーやアメリカメーカーは、USMCAの枠組みを活用してメキシコとカナダで製造した完成車をアメリカに輸出してきた。
ところがトランプ関税によって、アメリカとカナダ、アメリカとメキシコそれぞれの間で貿易に関する報復が取り沙汰される状況が続いている。
本稿執筆時点では、3カ国それぞれの主張があり、完成車および自動車部品においての解釈を明確にする資料が見当たらない。自動車に関するトランプ関税は、USMCAのみらず、日米間も含めて今後の動向を注視していかねければならない。
トランプ関税は、日本のユーザーにとっても新車価格の上昇に関係するかもしれない重要なファクターである。
