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【試乗】ダンパーのオイルが変わると走りが変わる……ってホント? KYBの次世代オイル「サステナルブ」を試したらマジで激変して驚きしかない (1/2ページ)

【試乗】ダンパーのオイルが変わると走りが変わる……ってホント? KYBの次世代オイル「サステナルブ」を試したらマジで激変して驚きしかない

この記事をまとめると

■環境に配慮した新世代のオイル「サステナルブ」をKYBが開発した

■純正サスペンションの内部のオイルを「サステナルブ」に変えて試乗した

■現在採用されているオイル「プロスムース」と比較して車格が上がったような質感になる

次世代のダンパーオイルが登場間近

 カヤバ(KYB)が2023年9月に発表し、2026年以降に日本での発売を計画している、環境に優しいダンパー用作動油「サステナルブ」。これを用いたダンパーの装着車両に、試乗する機会が得られたのでリポートしたい。

 今回の主役である「サステナルブ」とは、従来はダンパー用作動油に石油由来のベースオイルを使用していたところ、栽培過程でCO2を吸収し、かつリサイクルしやすい植物由来のものに変更し、さらにエコマーク認定基準の生分解度60%以上を確保することで、事故などで万が一漏れてしまっても自然に還り環境負荷が小さいという特徴をもつ。

 こうした特性から、「Sustainable:持続可能な」「Lubricant:潤滑剤」=「SustainaLub(サステナルブ)」と名付けられたのだが、「サステナルブ」はただ単に環境に優しいだけのダンパー用作動油ではない。乗り心地やタイヤの接地性、ハンドリングをも向上させる摩擦特性を備えた、走りの性能面でも進化したダンパー用作動油となっているのである。

 KYBオートモーティブコンポーネンツ事業本部の加藤慎治さんによれば、「我々は作動油を変えると乗り味が随分変わるということに2000年頃より気づいており、そのなかで独自に作動油を研究して、2018年より『プロスムース』という形で、自社レシピの作動油を投入した」と語る。

 そして、「それをきっかけに、添加剤の配合技術を深めていき、摩擦レスポンス(摩擦が立ち上がるタイミング)をより自在にコントロールできるようになった。そのため、『摩擦調整技術』と『環境』をキーワードに、環境に適したベースオイルを使って乗り味も両立させる方向で、2026年を目指して量産化を進めようとしている」。それが「サステナルブ」なのだという。

 しかし、ダンパーでクルマの乗り味をよくしていくうえでは、大きな課題があった。ダンパーの性能を評価するうえでは、「減衰力速度特性」という、ダンパーが動く速度に応じた減衰力の高さを指標として用いるのが一般的だが、「その数値をまったく同じにしても、A社とB社で乗り味が違うということは昔からあった」(加藤さん)のだとか。

 乗り味の具体的な中身をもう少し詳細にわけると、「タイヤひと転がりでわかる走りの質感、直進時のステアリングの座り、ダンパー作動初期からの減衰感やストローク感。これらは「減衰力速度特性」では表現できないものの、作動油や摺動部品を変更することで、これら乗り味が変わることは以前からわかっていた」。

 そこで着目したのが、ダンパー内部のピストンが上下に動くのに伴う、作動油が流れる方向の変化。凹凸が少ない良路を60km/hで通過した際、ダンパーの変位(位置の変化)に対し、ダンパーが実際に動いている速度は速く、「(グラフの)見た目以上に、内部で激しく作動油の流れが変わっている」。

 だがダンパーの構造上、動く向きが変わる瞬間は必ず速度がゼロになり、そこを何度も通過するため、そこでは減衰力が出ず、摩擦が支配的になる領域を使うことになる。また「作動油は押すと変形し、力を抜くと戻るが、この領域では油圧力を出しにくい」ので、この領域も摩擦が支配的になる。

 すると必然的に、ダンパー速度がゼロに近い微振幅域の摩擦をどうコントロールするか……ということになる。だが、前述の「摩擦レスポンスは高ければ高いほどよいわけではなく、最適なものにした」。また、「従来の『プロスムース』に対し『サステナルブ』では、摩擦自体の大きさは下げつつ、摩擦レスポンスは上げている」のだという。

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