
この記事をまとめると
■メーカーが設定する限定車には台数限定のモデルやお買い得仕様の特別仕様車がある
■台数を絞った限定車は色やパーツが市場のニーズからズレた特殊なモデルが多い
■特別仕様車は人気が高まるとカタログモデルとして再設定される場合もある
限定車にはいくつかの種類がある
乗用車には、常に販売しているグレードと、生産台数や期間を限定した特別仕様車がある。ただ、後者の実情は曖昧だ。「特別」と銘打ちながら、とくに注目すべき装備や機能がなく、ベーシックなグレードにオプション装備を加えて価格を割安に抑えた特別仕様車もある。また、つねに販売され、販売台数が通常グレードを上まわる特別仕様車もある。
そのなかで、期間や台数を限定した特別仕様車も用意される。トヨタは2025年9月、GR86にRZイエローリミテッドを300台限定で設定した。姉妹車のスバルBRZも、STIスポーツイエローエディションを300台の限定で発売している。
レクサスは2025年8月に、LBX MORIZO RRに、特別仕様車のオリジナルエディションを100台限定で用意した。内外装に独自のコーディネーションを施している点が特徴だ。
日産は2025年10月に、スカイライン400Rリミテッドを400台限定で設定した。タイヤを高性能化して、サスペンションやスタビライザー(ボディの傾き方を制御する足まわりのパーツ)の設定も変更している。
マツダは2025年10月、ロードスターのソフトトップのボディに、2リッターエンジンを搭載するマツダスピリットレーシング・ロードスターを2200台の限定で設定した。これにさらにチューニングを施した12Rも200台の限定で販売している。
これらの特別仕様車は、いずれも販売台数を限定しているが、その背景にはいくつかの理由がある。
まずボディカラーなどを含めて、特別装備の内容が個性的であることだ。前述のGR86やBRZに設定されたイエローボディは、多くのユーザーがほしがる色彩ではない。台数を限定してちょうどいい。
また、価格が突出して高い特別仕様車もある。たとえば先述のロードスターのソフトトップに設定されたマツダスピリットレーシングロードスター12Rは、価格が761万2000円に達する。ロードスターで売れ筋になるソフトトップのSスペシャルパッケージが308万7700円だから、2倍以上の価格だ。
これも多くのユーザーが購入するクルマではないだろう。そして、マツダスピリットレーシングロードスター12Rなどは、特殊なパーツも多く使っている。大量に供給できるパーツではないから、生産台数も限られる。
このように台数を限定した特別仕様車は、大量生産によるコスト低減を前提にしたクルマのなかでは特殊な存在だ。それを敢えて商品化する背景には、話題を提供することでその車種の注目度を高めたり、イメージリーダーに据えることもある。グレード化を視野に入れて、市場の反応をうかがうことも含まれる。
たとえば、今の日産車に幅広く設定されるエアロパーツを装着したハイウェイスターは、最初は1995年に、オーテックジャパンがラルゴに架装する特別仕様車に近いモデルだった。これが人気を得たことで、メーカーの生産ラインで製造するようになり、ハイウェイスターはほかの車種にも波及している。特別仕様車は、人気動向を探る役割も担っているのだ。
なお、これらの台数を限定した特別仕様車が、数年後に高値で売却できるとは限らない。クルマの人気動向は正確に把握しにくく、投資を目的に買うのは控えたほうがいい。
