
この記事をまとめると
■いま老朽化と維持費増大により信号機の撤去が加速している
■撤去は必要性を検討して行われLED標識やラウンドアバウトが代替手段となっている
■最適な配置へと再検証し持続可能な交通へ転換を図っていくねらいだ
全国で進む信号機撤去の真意
全国各地で信号機の撤去が進んでいる。クルマを運転する人にとって、信号機は交通安全を守る重要な存在だ。信号機が減少することで危険性を懸念する声もあるが、撤去には明確な理由があり、将来的な交通安全を重視した合理的な判断とされている。本記事では信号機撤去の背景と現状、今後について説明していこう。
<老朽化と維持コストの深刻な問題>
信号機撤去の最大の理由は老朽化の進行である。警察庁発表によると、全国におよそ21万基ある信号機のうち、耐用年数とされる19年を超えているものが2割以上、約4万9000基に達しているという。報道によると、最近5年で11基が老朽化により倒壊し、過去10年での倒壊件数は17件とも報じられている。本来交通事故から市民を守るはずの設備が、逆に人間の生命を脅かしかねない状況となっているのだ。
これら老朽化した信号機を更新しようにも、これには多額の費用がかかる。信号制御装置の交換コストは1基あたり概ね100万~300万円と高額で、もっとも安価なものでも1基あたり約140万円と報じられており、更新は容易ではない。信号機の更新は原則として都道府県警察の予算で行われるため、少子高齢化や過疎化で税収が減る地方自治体では、維持や更新より撤去を選択するケースが増えている。
とくに廃校となった学校周辺や地方の住宅地では、時間帯によってほとんど車両や歩行者が通らない場合も多い。さらに、道路網の整備が進んだ地域では、新たなバイパスが開通したり、地域の中心であった商業施設が移転したりすることで、かつて多くの人やクルマが行き交った道路の交通量が大幅に減少するケースは少なくない。これらの場合も、交通実態に合わなくなった信号機がドライバーに不必要な待ち時間を強いることになり、渋滞の原因となるだけでなく、通行がほぼないのに赤信号で待たされる状況が生じてしまう。
この状況では、むしろ「信号は守らなくてもよい」という意識を助長し、信号無視を招くおそれがあり、信号機を更新し維持したところでかえって逆効果になるケースも指摘されている。とくに常時点滅する「一灯式信号機」は、その役割が形骸化しているとの見解もあることから、全国的に撤去が進められている代表例である。
これらの要因から、警察庁は2024年度から5年をかけて、過疎化などで不要となった地域の信号機4200基以上を撤去する計画を実施しており、2024年度には全国で679基が撤去された。
