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アクセルを踏んでないのにクルマが進む「クリープ現象」ってどういう仕組み? この「副産物」がじつは人間の感性にぴったりだった (2/2ページ)

アクセルを踏んでないのにクルマが進む「クリープ現象」ってどういう仕組み? この「副産物」がじつは人間の感性にぴったりだった

この記事をまとめると

■AT車にはクリープという現象がある

■トルクコンバーター式のATはエンジン側とミッション側は常につながっている状態にある

■人間の本能的な考え方に対してクリープ現象はマッチしたメカニズムといえる

クリープ現象とはそもそもなにか

 自動車のメカニズムとは面白いもので、理にかなっていなくても感性があってしまうと、そちらをよしとする傾向がある。AT車のクリープ現象もそのひとつといえるだろう。クリープ現象、すなわちシフトレンジをDやLに入れておくと、アクセルを踏まなくても(アイドリング状態)、ゆっくりとだがクルマが動いてしまう現象だ。

 シフトレバーとクラッチペダル、アクセルペダルを操作しなければクルマが動かないMT車に対し、AT車はクルマが動くポジション(D、L、R)にシフトセレクターを入れておくと、アクセルペダルを踏まない(アイドリング)状態でもクルマが勝手に動いてしまう特性がある。そのために、Dレンジにセレクトしたまま信号待ちで停車するような場合には、ブレーキペダルに足を置くことで停止状態を保っておく運転操作が必要になる。

 さて、AT車の運転を思い起こしてほしいのだが、信号待ちの際にクルマが動かないよう、シフトセレクターをNまたはPに入れ直している人がどれほどいるだろうか? おそらく、ほとんど人はDレンジのままブレーキペダルに足を置くことで、クリープ現象によりクルマが動き出すことを防いでいるのではないかと思う。

 では、AT車のクリープ現象はなぜ起こるのか?

 その理由をメカニズム面から見ていこうと思うが、その前に、通常我々が一般にATといっているのは、エンジンの出力をトランスミッションに伝える際にトルクコンバーター(流体継ぎ手)を利用し、その後段にあるギヤ式トランスミッションで変速作用を行うシステムを指すことを再確認しておきたい。AT(自動変速機)を言葉どおりに解釈すれば、CVTやツインクラッチ方式(一般的な総称はDCT)もATなのだが、これらにはこうした専用の名称が設けられ、従来から存在するトルクコンバーター式変速機をATと表現している。

 ATは、ギヤ変速のためエンジン出力の断続を機械的なクラッチ方式を使わず、オイル(流体)を介することでギヤ変速時の衝撃を吸収する方式が採られている。逆にいえば、エンジン側とミッション側は常につながっている状態で、アイドリング回転域でもわずかながら、エンジン出力がミッション側に伝わっていることになる。

 このわずかなエンジン出力の伝達がクリープ現象で、ドライバーが何も操作しないと、極低速ながらクルマが動くことになる。これを防ぐためにDレンジにセレクトしたまま停車する際には、ブレーキペダルを踏むことで、クルマの動き出しを抑えることになる。

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