
この記事をまとめると
■駐車監視員制度の導入で放置車両が減りレッカー移動は激減した
■レッカー時の破損リスクや損賠懸念が民間・警察双方の負担となることも背景にある
■放置違反金制度の普及でステッカー処理が主流となる流れになった
レッカー移動は例外的措置に
むかしは駐車禁止の違反車両がレッカーで運ばれていくシーンをちょこちょこ見かけたものだが、ここ20年ぐらいでそうした光景を目にすることがめっきりなくなった。
いまでも「緑のおじさん」たちがせっせこせっせこ働いている姿は珍しくないので、駐車禁止の取り締まりは遠慮なく続けているようだが、レッカー移動はまず見ない。これにはどんな背景があるのだろう。
考えられる理由はいくつかあるが、もっとも大きいのは2006年から導入された駐車監視員制度の影響だろう。2006年の道路交通法改正により、公道の放置車両の取り締まりには警察官が立ち会う必要がなくなり、民間委託された駐車監視員が放置車両に「放置車両確認標章」を取り付けることが可能になった。
仕事熱心な駐車監視員=「緑のおじさん」が効率よく違反車両を取り締まったおかげで、違法な駐車車両自体が減ったというのが、レッカー移動が減った一因。またその翌年、2007年に指定車両保管機関制度が廃止され、レッカー移動の一部が民間に業務委託されたことも影響している。
レッカー移動時にクルマの外装を傷つけたり、車内の飲みものを倒したり、なにかを壊したり傷つけたり汚したとしたら、損害賠償を請求されかねない。そのリスクを考えたら、委託された民間業者では腰が引けるのも当然。クルマをレッカーするために傾けたりしたら、セキュリティ装置が働いて騒ぎになる可能性だってある。
民間ではなく警察がレッカー移動する場合でも、レッカー移動は行政法上の即時強制行為になるので、警察署長の判断が必要。もし移動の際クルマを傷つけたりすれば、警察に対しても損害賠償が請求される。ドライブレコーダーがついているクルマも多いので、証拠が残りやすく、もめごとになったら立場が悪いし、最近ではレッカー移動させた違反車両を保管できる警察署もかなり減ってきているという。
さらに放置違反金制度が導入され、「放置駐車違反」については運転者ではなく車両の使用者に「放置違反金」の納付が命じられるようにもなったので、上記のようなトラブルを避けるために、取りっぱぐれのないこの制度を活用し、トラブルのもととなるレッカー移動を避ける傾向はますます増えたといえるだろう。
これらの要因により、緊急性や悪質性が高い場合を除いてレッカー移動は敬遠されるようになり、ほとんどの駐車違反はステッカーによる警告と反則金・違反金の納付という形で処理されるのがデフォルトになったというのが現状だ。
