
この記事をまとめると
■復活を果たしたホンダ・プレリュードであるがトヨタ・プリウスに似ているという声もある
■似ているからといって「カッコ悪い」とは限らない
■プレリュードにもう少し個性があれば「パクリ」といわれることもなかったはずだ
プレリュードとプリウスはそんなに似ているのか
9月5日に発売されたホンダの新型プレリュード。そのスタイリングについてはいまだ賛否の声が絶えず、とくに「プリウスのパクリだ!」といった感想が多く聞かれ、それが余計に印象を悪くしているようです。では、なぜそうした声が多く聞かれるのか? 今回はその点をあらためて考えてみたいと思います。
似ていることとデザインの善し悪しは別?
「アンリミテッド・グライド」をデザインコンセプトとし、滑らかに飛行するグライダーをモチーフとした新型プレリュード。一方、「ひと目惚れするデザイン」をコンセプトに「ワクワクさ」を目指したプリウスの開発意図に、特段の共通点は見当たりません。
しかし、いわゆるハンマーヘッドタイプのフロントフェイスと、流麗な面をもったクーペ(的)スタイルの組み合わせによって「パクリだ!」と指摘されてしまうのですから、スタイリングとは何とも難しいものです。ま、それでもフェラーリのプロサングエくらい車格差があれば話は別のようですが……。
そのプレリュードの担当デザイナー氏は、この流行の顔について「新型は顔で個性を出すのではなく、ボディ全体で存在感を出したかった」と語っています。つまり、前方にピークをもつ独特のプロポーションや美しい面でプレリュードらしさを追求したワケで、顔には必要以上にこだわらないと。ですから、そこへ最新流行パターンを「置く」のはある意味自然だったのかもしれません。
ただ、当たり前の話ですが、何かに「似ている」ことと「カッコ悪い」というのは別の話です。いくらプレリュードの顔がプリウスに似ていても、だからダメなデザインだというのはチョット違うでしょう。
たとえば、ネオ・クラシックとして人気の1980年代のクルマはどれも似たような角型ランプの顔が溢れていましたが、優れたデザインか否かは四角いランプだけで決まるものではなく、それを含むボディ全体で決まるもの。ですから、もしプレリュードのデザインを語るなら、それと同様の視点で考える必要があるでしょう。
6代目のオリジナリティとは?
ということで、あらためてニュートラルな目でプレリュードを見てみると一体何を感じるのか。それはズバリ個性の欠如です。
歴代の5台は比較的コンパクトな2ドアクーペとして、それぞれに相応の個性がありました。それは2代目(AB/BA型)のように大ヒットモデルもあれば、販売的にはイマイチなモデルもありましたが、基本はアメリカンな風味を軸足に独自の世界観を打ち出していました。
それに対し、新型はどこから見ても現代的で美しい2ドアクーペでありながら「コレ」といった主張、もしくは香りのようなものがないのです。たしかにグライダーのような軽快さは感じますが、存在感自体までが軽く空気のように思えてしまう。
最近のホンダ車はシンプルなスタイリングに好感がもてますが、このクルマはシンプルというより「要素の不在」を先に感じてしまう。その主張の弱いボディに、いまトヨタが広く展開する「顔」を付ければ、そりゃあ結果としてそこばかりが目立ってしまうというワケです。逆にいえば、もしプレリュードのボディに歴代に負けないオリジナリティがあれば、ここまで「パクリ!」の合唱にはならなかったと思うのです。
同じクーペ(的)スタイルとはいえ、2ドアと4ドアである両者のデザインは「パクリ」といえるほどソックリではありません。しかし、それでも「似てる!」と思わせてしまう理由が厳然とあるということです。
