
この記事をまとめると
■かつてメルセデス・ベンツ SLをライバルに据えたキャデラックXLRが存在した
■アメ車らしいV8エンジンと先進電子制御による快適性重視のグランドツアラーだった
■販売台数は少なく現在は希少車だが強烈な個性はいまも色褪せない
メルセデスSLに挑んだもうひとつのラグジュアリーオープン
ラグジュアリーを極めたクーペカブリオレといえば、古くから2シーターオープンスポーツの最高峰に位置づけられていたメルセデス・ベンツ SLを思い出す人が多いと思う。とくに1971年登場のR107と呼ばれた3代目、1989年登場の4代目R129、そして2001年登場の5代目R230などが思い出される。
しかし、SLが人気だった北米のアメリカ車にも、SLをライバルと目論んだラグジュアリーな2ドアクーペカブリオレが存在した。それが2003年の北米国際オートショーで発表されて翌年正式デビューした、キャデラックのXLRであった。
顔つきはまさしく2000年代のキャデラックそのものだが、2シーターオープンスポーツというコンセプトはメルセデスベンツSL500やジャガーXK8を意識したことはもちろんで、当時のキャデラックのフラッグシップモデル、新世代キャデラックとして位置づけられていたのである。
日本国内では2024年3月に1150万円で発売。エッジの利かせ方が特徴となる、2シーターかつ電動格納式ハードトップをもつボディサイズは全長4520×全幅1850×全高1290mm、ホイールベースは2685mm。プラットフォームはなんとGMのアメリカンスポーツの雄、コルベットのものを用いる。駆動方式はもちろんFRだ。意外なのは車重。アメリカ車にして、当時のメルセデスベンツSLより180kgも軽量な1670kgを実現していたのだ。
ロングノーズに、縦置きに収まるエンジンはFF用をFR向けに改良した「ノーススター」と呼ばれる4.6リッターV8 DOHC 32バルブで、324馬力・42.9kg-mを発生。ミッションは5速ATのみで、MTは用意されない。ミッションをリヤに搭載するトランスアクスル方式の採用によって、前後50:50の重量配分を達成しているところにも、キャデラックの2シーターオープンスポーツとしての意地が見える。
電子装備も満載で、フロント:ダブルウイッシュボーン、リヤ:リーフスプリングのサスペンションには磁力で減衰力を1000分の1秒単位でコントロールするマグネティックライドコントロールを採用。そのほかにも、磁力制御の可変パワーステアリングのマグナステア、ABSとTCSを統合したスタビリトラックなど、先進的な電子機能をフル装備していたのである。
インテリアは運転席と助手席が対称となるデュアルコクピットを採用。ラグジュアリーな雰囲気がむんむんで、メーターまわりとリモコンキーのデザインはイタリアの超高級宝飾品ブランドのブルガリが担当し、メーターとリモコンキーに「BVLGARI」のロゴが刻まれていた。ブランド好きにはたまらない演出だったようだ。
当時ちょい乗りをした経験があるが、もっとも印象的だったのは、物珍しさもあってか街なかでかなりの注目度を浴びたことだ。電動格納式ハードトップの開閉もしかりで、かなり大げさに高くもち上がる振る舞いと、盛大な開閉音を含めたその動作もまた、周囲の注目度を高めた要因だったと記憶する。走る台数の少なさもあって、「目立ち度」では、先輩のメルセデスベンツSLを上まわっていたような気がする。
