
この記事をまとめると
■高速道路のカラーコーン設置はいまも基本的に人力で行われている
■設置作業は極めて危険で小さなミスでも事故扱いになる現場である
■安全性向上を目的に開発された自動設置装置の普及に期待したい
車線規制の裏側にある危険な手作業
高速道路で車線規制が行われているとき、規制帯と通行帯の境界線に目印として置かれているカラーコーン。多数のクルマが高速で行き交うなか、あのコーンはどうやって置かれているのであろうか。結論からいうと、コーンの設置は基本的に手作業で行われる。まず、規制する場所の起点より少しうしろに標識車を停車させ、後続の一般車両に規制があることを伝えて車線変更をするように促す。
カラーコーンを乗せた作業車は標識車の前にいて、後続の一般車両が規制する車線に入ってこないことを確認してから、コーンの設置作業に入る。作業車の規制をする車線側の車側に作業員が付き、荷台の作業員からコーンを受け取って順次設置をしていくのだ。これはいうまでもなくたいへん危険な作業であり、コーンを設置する作業員はまさに命がけの作業をしているといっても過言ではない。
万一、カラーコーンを受け取る作業員がそれを受け損なって、規制していない車線に転がるなどすれば、通行車両を巻き込んだ事故が発生しかねない。仮に通行車両と接触しなかったとしても、作業の上では「事故」の扱いになる。工事規制している場合であれば、そのためにその日の工事が中止になることもあるのだ。
そこで、作業員の危険回避と確実な作業性を求めて、カラーコーンの自動設置・回収装置を積載したトラックが開発された。手がけたのは、ネクスコ東日本とネクスコ九州の2社である。ネクスコ東日本のものは「オンボードラックコーン」と呼ばれ、3トンロングのトラックに搭載することを想定しており、車側両側に設置・回収アームを備えたタイプ。コーンの最大搭載本数は160本で、臨時に立てる規制用の道路標識を16本載せることができる。
ネクスコ九州のものは「ロボコーン」と「小型ロボコーン」で、それぞれ4トン車と2トン車である。こちらはベルトコンベアでカラーコーンを送り出し、車両の右後方からアームで設置・回収をする。コーンはロボコーンなら100本、小型ロボコーンでも80本をベルトコンベア中央部に搭載することが可能。標識の搭載数は、それぞれ12本・16本だ。
これらはいずれも実用化されているのだが、まだ普及段階に至っているとはいい難い。たとえば設置速度だが、「オンボードトラックコーン」でカラーコーンを設置する場合は4.8秒/本、回収には7.2秒/本程度で行える。しかし、事前準備やセッティングに加えて導入コストを考えたとき、トータル的にはまだ人による作業のほうが効率的だと思われているようだ。
さらに、使用するカラーコーンには規格があって、どんなものでも対応できるというわけではない。また、夜間に使用するコーンにはその内部を光らせるために、光源を仕込むこともあるのだが、それには対応をしていない。この光源についても、ランプ・デリネーター・LEDなどというように、形も設置方法も異なる複数のものが存在し、これを自動的に装着するのは技術的にもかなり難しいといわれている。まだ改良の余地は残されているが、作業の安全性確保ためにも、こういった機器の開発はどんどん進めてもらいたいものだ。
