
この記事をまとめると
■商用EV最大の課題は「航続距離」と「充電」だ
■神奈中バスでは太陽電池搭載の実証実験が行われている
■太陽電池はエンジン負荷を減らす現実的エコ技術として注目されている
路線バスに太陽電池を搭載して電費を改善
地球環境に配慮した次世代車両として、電気自動車(EV)の実用化が進んでいる。すでにわが国でも、複数のカーメーカーが、電動の軽自動車や普通乗用車を発売しており、その実力は実証済みだ。また、商用車でも、小型トラックや小型バス・路線バスなどを中心に、少しずつ普及し始めている。そして海外では、アメリカのテスラ社や中国のメーカーなどが、世界各国に向けて幅広く展開をしてシェアを争っているという状況だ。
ただ、大型トラックや観光バスでEVを普及させるのはなかなか難しいといわれている。その理由は、1回の充電で走れる距離だ。EVは、電気を溜めるためにリチウム電池を使用する。これは、鉛バッテリーとは比較にならないほど高性能だが、1回の充電で大型車両を長距離運行させるためには、それを大量に搭載しなければならない。すなわち、現段階ではディーゼル車のコストや性能には及ばないということなのだ。
ネックになる問題はもうひとつある。それは充電の設備と時間だ。商用車が利用するには、充電スポットは圧倒的に足りない。充電時間も、軽油の給油に比べれば時間がかかる。前述したバッテリー性能の問題も合わせて考えれば、現段階において商用車EV実用化が可能なのは、
・営業所などの拠点に充電設備が設けることができる。
・計画的な車両運用で充電を効率的に行うことができる。
・ 1回の充電で走れるような距離で運用ができる
などの条件をクリア可能な路線バスやラストワンマイルの小型トラックが向いているということだ。
バッテリー性能や充電の問題を解決する方法として期待されているのが太陽電池である。これは、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置。家屋・ビル・工場などの屋根などに設置され、建物の電力供給にひと役買っている。ただ、まだ太陽電池の発電力だけですべての電気を賄うだけの性能はない。これだけでEVを走らせるのは、まだまだ先の話である。
しかし、内燃機関車両の補助エネルギーとして、燃費改善には貢献することは可能だ。そこで、神奈川中央交通の路線バス5台に太陽電池を搭載し、低速運転時や停車中の空調などに電力を供給して、エンジン負荷を軽減しようという試みが開始された。導入期間は約5カ月で、その間の燃費改善効果を検証しようというわけだ。
今回使用したのはカルコバイライト太陽電池。従来のシリコンタイプとは異なり、黄銅鉱系の化合物を使用したものだ。製造法や原材料のバリエーションが豊富なため、コストを抑えたものから高性能なものまで製造が可能。さらに、軽量・薄型・柔軟性が高い・振動や衝撃に強い・耐久性が高いなどといった特色があり、バスの屋根に装着するには最適の電池なのである。
太陽電池は「再生可能エネルギー」のひとつだ。これによる大容量の発電が実現すれば、現在のエネルギーシステムは根本から変わることになる。車両の外面を大容量発電ができる太陽電池で覆い、高性能バッテリーに充電して走ることができれば、究極のエコカーを誕生させられるのだ。
実現にはまだ多くの年月を必要とするのであろうが、今回の試みがその歩みを進めてくれることは間違いないだろう。
