
この記事をまとめると
■名車と呼ばれるクルマは数多くある
■トヨタ・スポーツ800は「軽さ」と「空力」を武器にした1台だ
■「ガソリン燃焼式ヒーター」と呼ばれるものがスポーツ800には搭載されている
名車から危険な匂いがプンプンするぞ……
「日本の名車を挙げなさい」という漠然とした問題でも出されようものなら、何を答えればいいかわからないという人が大半ではないだろうか。なぜなら、あまりにも名車と呼べるクルマが多く、仮に「セダン」や「ハッチバック」、「トヨタ」、「ホンダ」と形状やメーカーを絞ったとて、おそらく答えは出ないだろう。
しかし、満場一致で名車と呼ばれるに相応しいクルマというのは確実に存在する。そんな1台が、1965年4月1日に販売が開始された、トヨタ・スポーツ800(通称:ヨタハチ)だ。このクルマを筆者より詳しい人は数多いるので詳細は割愛するが、このクルマは、当時のトヨタのコンパクトカーであったパブリカをベースに、パーツなどを多くの部分を共用して開発・生産コストを下げつつ、徹底的に空力性能を磨き、軽量化を突き詰め、「空力」と「軽さ」を武器とした1台。
エンジンは強制空冷式のU型水平対向2気筒OHV、スペックは数値上、最高出力が45馬力/5400rpm、最大トルクは6.8kgm/3800rpmとだいぶ非力なスペック。最近の軽自動車以下だ。ミッションは4速MTであった。
しかし、前述の「空力」と「軽さ」を味方につけ、最高速度155km/hをマークした。0-400m加速も18.4秒、燃費も驚異の1リッターあたり31km/Lといわれていた。このようなパフォーマンスの高さから、当時のモータースポーツでも大活躍したという。「軽さは正義」とはこのクルマのためにあるのかもしれない。
さて、そんなスポーツ800。掘れば掘るほどいろいろなトピックがあるのだが、そのなかでもとりわけユニークなパーツがある。それが、いまの時期ありがたいヒーターだ。
当時のクルマどころか、1980年代あたりのクルマまで、エアコンがオプションであることも珍しくなかったのだが、ヒーターはさすがについていたという。ヒーターの仕組みはクルマによって異なるが、簡単にいえば、エンジンを冷却する冷却水(通常使用で100℃ほど)をヒーターコア内に循環させて、その熱を風によって車内に送り込んで、車内を温めるというもの。エンジンから発生した熱を効率よく使える仕組みだ。
しかし、このスポーツ800に搭載されているヒーターはなんと、「ガソリン燃焼式ヒーター」と呼ばれるものが搭載されている。もう名前から物騒で、いかにもヤバそうである。エンジンルームのバルクヘッド(運転席とエンジンルームを仕切る板)あたりについている青い筒がそれだ(画像の右側の大きな筒)。
このヤバそうなヒーター、ガソリンと書かれているが、中身は石油ストーブのようなものらしいが、危険な匂いがプンプンする。しかし、調べた限りではこれが原因で車両が燃えたとか、爆発したという話は聞いていない。ちなみに想像に容易く、めちゃめちゃ暖かいらしい。ただ、ON/OFFしかなく、風量調整もできないので、細かい温度調整はできないそう。
旧車マニアの間でも相当珍しい装置らしく、イベントなどではたまに話題になるそう。なお、このガソリンはガソリンタンクから共有されているので、エンジンに使う燃料をそのまま使っている。燃費がめちゃめちゃいいクルマだけに、ちょっとマヌケなシステムだ。なお、スポーツ800のエンジンは前述のように空冷式なので、そもそも冷却水がない。現代のような方式は不可能なのだ。
この面白いヒーターは壊れている場合が多いそうだが、もし実働のヒーターをつけているクルマを見つけたら、ぜひ拝ませてもらいたいものだ。
