
この記事をまとめると
■京都市営バスの観光客対応と経営実態を解説
■5606万人の来訪者を支えるも83系統中24系統のみ黒字で全体は営業係数103の赤字
■洛西方面の不採算路線維持と運転手不足で改善が急務となる状況にある
市民と観光客の共存が安定経営のカギ
京都は、日本有数の観光地。2024年に京都を訪れた観光客は、5606万人に及ぶ。市内人口約143万人に対して、おおよそ40倍の人たちが1年の間にやってきたことになるわけだ。イメージからすればインバウンドによるオーバーツーリズムのように思われがちだが、その内訳は外国人が1088万人(過去最高人数)で、残る4518万人は日本人観光客なのである。ただ、マナーの問題で一部の外国人が悪目立ちしたことから、そのような印象になったのかもしれない。
これらの観光客は公共交通機関利用者が多く、市内観光には電車・タクシー・バスなどが使われる。ただ、京都市は他の大都市である東京・大阪・名古屋などと比べると、電車の利便性が必ずしも高くないのだ。市営地下鉄は京阪京津線や近鉄奈良線と相互乗り入れしているものの、東西に1本と南北に1本の2路線しかなく、JRは新幹線を含めて4路線に留まる。
主な私鉄は、鴨川東岸を走る京阪鴨東線(三条駅から本線直結)と四条通りを行く阪急京都線(桂駅から嵐山線が分岐)で、あとは京福の嵐山線・北野線に叡電本線と鞍馬線であり、私鉄とJRや私鉄同士の乗り入れはない。そのため、市民は市内の移動に市営バスを多用する傾向にあるという。
一部の報道を見ると、こういった背景にある市営バスはキャパシティオーバーの状態になり、市民が乗れないほど混雑しているとされている。だとすれば、一般に収益が悪いとされる路線バスであっても、市営バスはかなり儲かっているのではないかと思う人も多いだろう。ところが、じつはそうではないのだ。
その理由は単純で、混雑している路線は全体の35%弱に過ぎないからである。市営バスは83系統(2024年度)が運行されている。そのうち、黒字路線は24系統しかない。なかでも、営業係数(100円売り上げるのにいくら費用がかかるのかという指数)が150以上の大赤字路線が27本も存在するのだ。市営バス全体の営業係数も103で、以前より改善されているとはいえ赤字なのである。
赤字が目立つのは、洛西方面の路線。一般的な企業なら、不採算事業を切り捨てるのは当たり前かもしれないが、公共交通機関はそういうわけにはいかない。そこに利用者が一定数存在する以上、少々減便してでも朝から晩まで走らせなければならない。赤字=廃止という等式は成り立たないのである。とくに洛西は鉄道路線が少なく、バスは大切な住民の足なのである。
京都市交通局も、この状況に手をこまねいているわけではない。一部の路線運行を民間バス事業者に委託するなどして、人件費・管理費の圧縮を図っているのだ。しかし、近年では運転手不足が深刻化してきたことにより、民間バス事業者の受託が難しくなってきているという。
しかし、運行系統の見直しやバス運用の効率化などを進めて、収支改善の努力は続けられている。なかでも、観光地の停留所だけに停車する観光系統「楽洛ライン」や、特別料金を徴収する「観光特急」などは観光客に好評で、営業係数も黒字になっている。こういった施策によって市民・観光客の共存が図られれば、市営バスの安定的な黒字化も夢ではないのかもしれない。
