
この記事をまとめると
■ホンダが本田技術研究所(和光)の施設見学会を行った
■見学会では陸上競技用車いすレーサー「翔〈KAKERU〉」を報道陣に公開した
■F1のピストンやターボハウジングの造形に使われる3Dプリンター技術も公開
ホンダは陸上競技用車いすレーサーにも挑戦
陸・海・空を制覇し、最近では宇宙にまで進出しつつある日本が誇るモビリティカンパニー、それがホンダだ。もちろん事業のメインとなっているのは”陸”の四輪車と二輪車であるが、それでも乗用車からモーターサイクル、マイクロモビリティ、シニアカーまで、あらゆるカテゴリーの陸上の乗りものを網羅している。
そんなホンダは、じつは車いす業界にも参入している。そして、ホンダがただの車いすで満足するわけがなく、“走る実験室”のステージとして選んだのが陸上競技用車いすだった。
かくして誕生したのが、ホンダのフルカーボン陸上競技用車いすレーサー「翔〈KAKERU〉」だ。そして、その「翔〈KAKERU〉」を報道陣に特別に、本田技術研究所 和光研究所で披露してくれるという。もう、”フルカーボン”という時点で興味津々だ。筆者も意気揚々と見学会に参加してきた。ちなみに当日は、陸上競技用車いすレーサー「翔〈KAKERU〉」と3Dプリンター施設の見学会となっており、公開可能な範囲で最新の3Dプリンターも見ることができた。
さて、そのフルカーボン陸上競技用車いすレーサー「翔〈KAKERU〉」である。じつはホンダは1993年、ホンダ技研工業の特例子会社であるホンダ太陽で「車いすレーサー研究会」を発足。その後1999年にホンダアスリートクラブが誕生し、翌2000年から本田技術研究所で本格的に車いすレーサーの開発に着手している。2014年には「極〈KIWAMI〉」を開発し、2019年にはそれまでの技術の粋を結集してさらなる高みを目指したレーサーモデル「翔〈KAKERU〉」を発表した。これがホンダの陸上競技用車いすレーサーの歩みだ。
実際に目にした「翔〈KAKERU〉」は、いっさいの装飾を省き極限まで軽量化された、じつに美しいレーサーだった(車両重量7.9kg!)。ウイング形状のフレームなど、これまでホンダがモータースポーツで培ってきた技術がふんだんに注ぎ込まれていることがうかがえる。おそらく、F1の技術が導入された車いすレーサーなど、ホンダ以外にはなかなか作れないだろう。
ちなみに「翔〈KAKERU〉」のほとんどのパーツは、オートクレーブ製法によるドライカーボン製。カーボンディスクホイールに装着されるハンドリムもカーボン製だが、ダイヤモンド粉末加工を施すことで、ウエット時でもドライバーが漕ぎやすいよう工夫されている。
また、ホンダが車体をただ製作するだけで終わるはずがない。ホンダは、選手個々に最適な「翔〈KAKERU〉」を製作できるよう、「漕ぎ力計測機器」と「テストベンチ」まで開発した。「漕ぎ力計測機器」を使えば、選手の漕ぐ力がホイールのどの地点からどの地点までで発生しているかが明確にわかるし、「テストベンチ」を使えば、選手の漕ぐ力がホイールにもっとも効率よく伝わる姿勢を瞬時に把握できる。これらを組み合わせて、最適な形状のフレームを製作するというわけだ。
このようにホンダのノウハウと技術が惜しみなく注ぎ込まれたフルカーボン陸上競技用車いすレーサー「翔〈KAKERU〉」。その価格はおよそ450万円〜となっている。ちょっとしたクルマが買える金額ではあるが、使われている素材や製作にかかる手間、そして「翔〈KAKERU〉」に込められたホンダの最新技術とエンジニアの情熱を考えると、けっして高い買い物ではないのかもしれない。
