
この記事をまとめると
■スポット溶接は鉄板を電気抵抗熱で融かし接合する
■スポット増しに加えて接着剤の併用が市販車でも普及している
■レーザー溶接は隙間なく接合できるため剛性向上に有効な技術である
溶接はクルマを構成する根幹技術
スポット溶接とは、2枚の鉄板を重ね合わせてその上下に電極を当てて電気を流し、鉄板で流れる電気抵抗による熱で鉄板を融かし接合する方法をいう。鉄板という素材同士が直接くっつくので、割れるなどの損傷がなければ、溶接部分がはがれる心配がない。
接着剤を使う場合、それがどれほど強い接着力をもっていても、いずれはがれる可能性がないとはいえない。それに対し、そもそも素材同士が一度融け合い、一体化して固まるスポット溶接は、ほぼはがれる懸念がなくなる。強いていえば、素材の劣化で錆や割れるなどによって損傷することはあるだろう。
いずれにしても、場合によっては数十年にわたり使われたり、不整地路を走ったり、高速で連続走行したりすることも考えられるクルマでは、溶接した箇所がはがれれば命に係わる事故を起こしかねない。そこで、素材同士を密着・融合させてつなぎ合わせるスポット溶接が使われている。
スポット溶接はロボットで行う時代となっている。設計された定間隔で電極を当てて溶接をするのは、ロボットが得意とする製造法といえる。その溶接箇所は点として間隔を空けて行われる。したがって、溶接個所と次の溶接個所との間には溶接されない部分が残る。それでも支障のないように設計されているが、溶接されない部分があるということは、そこでミクロ的ではあっても鉄板同士がズレることも考えられる。
ことに、モータースポーツのような極限走行を連続して行う際には、そうした一種のズレのような状況が頻発するため、そこから剛性の弱さが露になることも考えられる。そこで、スポット増しと呼ばれる溶接の追加が行われる。ある一定間隔でスポット溶接されている未溶接部分に追加の溶接を行うかたちでスポット溶接を追加することから、「スポット増し」と呼ばれるようになったのだ。
それとは別に、市販車の生産段階で、スポット溶接と接着剤を併用することも行われるようになった。つまり、スポット溶接で隙間の生じる部分に接着剤を用いて、2枚の鉄板のくっつき具合を向上させるわけだ。製造段階で簡便な作業の追加で強化ができるために、高性能・高額車種に限らず普及するようになった。
これによって車体剛性はより高まる。操縦安定性だけでなく、快適な乗り心地を満たすうえでも車体剛性は重要だ。クルマの骨格ともいえる車体剛性が高まれば、それを取り付け点とするサスペンションが滑らかに作動できるようになり、路面の凹凸を吸収しやすくなる。
スポット溶接とは別に、レーザー溶接という手法もある。これも車体剛性を高める溶接方法だ。電極に電気を流すスポット溶接とは違い、レーザー光線を使って素材を融かすことで溶接できる。この場合、レーザー光線を連続的に溶接部へ当てて移動していくと、スポット溶接のような溶接個所の間の未溶接部がなくなる。つまり、スポット溶接に接着剤を併用したのと同じように隙間なく溶接できるので、剛性を飛躍的に高められるのだ。ただし、車体すべてに行うのは難しく、必要な箇所に限定した使われ方が多いようだ。
いずれにしても1990年代以降、車体剛性の重要性が操縦安定性や乗り心地に加え、衝突安全においても不可欠となり、スポット増しや接着剤の併用、あるいはレーザー溶接といった溶接方法が注目を集めるようになった。
