
この記事をまとめると
■2024年に伝説エンジニアがダラーラMPSを発表
■ダラーラMPSは快適性を犠牲にしてすべてを走ることに振ったサーキット走行専用車だ
■世界にたった1台というダラーラMPSがオークションでいくらで落札されるかに注目
ダラーラの新たなる挑戦はサーキット走行専用車
スーパーカー好き、あるいはモータースポーツフリークであれば、ジャンパオロ・ダラーラの名前を知らない人はいないだろう。フェラーリやマセラティでエンジニアとしてキャリアを積み、ランボルギーニではミウラの開発に関与し、その後は自身の会社を設立。いまやモータースポーツ界で確固たる地位を築いた、まさにリビングレジェンドである。
そんなジャンパオロ・ダラーラが1972年に設立したダラーラ・アウトモビリは、レーシングコンストラクターとして大きな成功を収めた。FIA F2やFIA F3、そしてインディカーといった主要フォーミュラカテゴリーにシャシーを供給するなど、その存在感は圧倒的だ。そして2017年には、長年の夢であった自社製ロードカー「ダラーラ・ストラダーレ」を発表し、公道の世界にも進出している。
このようにフォーミュラカーとロードカーの双方で実績を積み上げてきたダラーラが、新たに送り出したのがサーキット走行専用モデルだった。2024年に発表された「ダラーラMPS(マキナ・ポスト・シンゴロ)」は、その名のとおり「単座」を意味するシングルシーターであり、「個人が所有できるフォーミュラマシン」というコンセプトを具現化した1台である。
最大の特徴は、その割り切った設計思想にある。一般的なスーパーカーに求められる快適性や実用性は徹底的に排除され、純粋に走ることにこだわって製作されている。キャビンは車体中央に配置されたひとりぶんのみで、極端に低い車高と露出したホイールまわりが、フォーミュラカーを彷彿とさせるシルエットを形成。ひと目でサーキット走行専用車とわかる仕上がりだ。
パワートレインについては、ダラーラ・ストラダーレと多くのコンポーネントを共有しているとされる。搭載されるのはフォード製2.3リッター直列4気筒ターボで、最高出力は約400馬力。これをカーボンモノコックのミッドシップに配置し、トランスミッションを介して後輪を駆動する。なお、トランスミッションはパドルシフト式のセミATの6速オートマチックマニュアルだ。
近年、このようなマシンが登場する背景には、ハイパーカー市場の変化がある。従来は希少価値や圧倒的なパフォーマンスが重視されていたが、現在は「体験そのもの」に重きを置く流れが強まっている。単に所有するだけでなく、メーカーによるサポートのもとでサーキットを走ることができる体験型商品への需要が高まっているのだ。
ダラーラMPSもまさにその延長線上に存在するマシンといえ、単なるコレクションアイテムではなく、ドライバーとして非日常の極限体験を味わうためのマシンといえる。オーナーは専用イベントやトラックデイを通じて、その性能をフルに引き出すことになるだろう。そして、それを味わうことができるのはたったひとりになるという。そう、ダラーラMPSが製作されるのはたった1台となる予定だ。
「ハイパーカーとレーシングカーの中間」という新たなカテゴリーを体現しているダラーラMPSは、ナンバー付きスーパーカーとも純粋なレーシングカーとも異なる、いわば「フォーミュラ体験デバイス」とでも呼ぶべき存在だ。2026年4月25日にモナコで開催されるオークションに出品される同車の落札予想価格は、70万ユーロ(日本円にして約1億3000万円)以上とされている。その価値は計り知れないだけに、いくらで落札されるかに注目したい。
