
この記事をまとめると
■ポルシェはレースシーンで長年活躍役していた
■主に911シリーズに用いられる「カレラ」のサブネームはスペイン語で「競争」を意味する
■サブネームの域を外れかつて車名として使われた過去もある
「カレラ」はポルシェを象徴するサブネームだ
ポルシェにとって、カレラ(Carrera)というサブネームがいかに重要で特別なものであるのかは、その歴史を振り返れば何よりも明らかになる。そもそもカレラとは、スペイン語で競争、すなわち自動車の世界においてはレースを意味する言葉。ポルシェは1950年から1954年までの5年間に渡って、メキシコのオンロードを舞台に開催されていた長距離レース、「ラ・カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に「356」や「550スパイダー」などで参戦。最終年の1954年には550スパイダーで総合3位、同時にクラス優勝を果たすという戦績を残している。
このレースに由来する、カレラの名が掲げられたモデルがポルシェのカタログ・モデルとして初めて発売されたのは1955年のことだった。リヤに100馬力の1.5リッター水平対向4気筒DOHCエンジンを搭載した「356A/1500GSカレラDX」と、その最高出力を110馬力にまで高めた「同カレラGT」の両車がそれだ。現在にまで続くカレラの歴史は、ここにひとつの始まりがあったといってよいだろう。
ポルシェからはその後も、ロードモデル、そしてもちろんレーシングモデルにおいても、さまざまなカレラが誕生することになるが、ポルシェのファンにとっては、やはり1973年に発表された「911カレラRS 2.7」が持つ存在感は圧倒的だ。当時FIAが定めていたグループ4のホモロゲーションを取得するために、当初は500台のみが限定生産される計画だったこの「ナナサン・カレラ」は、最終的に1580台が出荷されるに至ったことからもわかるように、きわめて高性能で魅力的なモデルだった。2.7リッターの水平対向6気筒SOHCエンジンは210馬力を発揮。それに対して車重は、もっとも装備内容が充実した「ツーリング」仕様でも1075kgに過ぎなかったのだから、その走りが強い刺激に満ち溢れていたことは容易にそれが想像できるところだ。
そしてこのカレラの名は、1980年代を迎えるとポルシェのカスタマーにとってさらに身近なものになる。ポルシェは1984年モデルの911(930型)で、それまで大きな成功を収めていた3リッター仕様の「SC」を、新たに3.2リッター仕様へとアップデートするとともに、それに「3.2カレラ」の名を与えたのだ。以後カレラは、2015年に誕生した後期型の第7世代911(991.2型)で、搭載エンジンがターボ化されるまで、911の自然吸気モデル(タルガ、GT3、GT3RSを除く)を象徴するネーミングとなった。
2018年に発表された現行型の911(992型)、そしてそのビッグマイナーチェンジ版である992.2型でも、もちろんその事情は変わらない。ちなみにタルガにカレラの名が用いられないのは、そもそもタルガがイタリアの公道レース、「タルガ・フローリオ」に由来する名称であるため。一方のGT3やGT3 RSはモータースポーツのカテゴリー(RSは前で触れたナナサン・カレラのそれと同じく、レン・シュポルト=レーシング・スポーツを意味している)を表している。レースに関連する言葉をただ羅列するのは、やはりポルシェの美学には反しているのだろう。
なお、カレラといえば現代においては911のもの……そう考えるファンも多いかもしれないが、ポルシェは過去に、究極のカレラともいうべき1台を生み出していることを覚えているだろうか。
それは2003年に発表された、5.7リッターのV型10気筒DOHCエンジンを612馬力の最高出力でミッドに搭載した「カレラGT」だ。最初にも触れたとおり、ポルシェにとってカレラの称号は特別なもの。それをダイレクトに車名として用いたこのモデルが、いかに驚異的なパフォーマンスを誇り、そしてまた現在では極めて貴重なコレクターズアイテムとなっていることは、改めてそれを詳しく解説するまでもないところだ。
