
この記事をまとめると
■イタフラ車の低信頼性イメージは旧時代の独自規格に起因する過去の話
■現代はグループ化と部品共通化で世界基準の品質へと大きく向上している
■偏見の正体はクルマそのものの問題もあるが維持環境や先入観の要因も大きい
ドイツ車だけが安心という幻想
「イタリヤ車やフランス車は、デザインはいいけどすぐ壊れる。信頼性で輸入車を選ぶなら、やっぱりドイツ車だよね」
もしもいまだにこのようなことを真顔で語っているとしたら、大変失礼ながら、その情報の賞味期限は20世紀末か、せいぜい21世紀初頭あたりで切れているといわざるを得ない。かつては「アルファロメオの電装系は雨の日に死ぬ」「プジョーのATは変速ショックで腰を砕く」といった都市伝説が流れていた時代もあった(ような気がする)。だが近年のイタフラ車であれば、さすがにそのようなことは一切ない。
なぜ昔のイタフラ車は壊れたのか。それは、主要な部品を自国や自社の「独自規格」で作っており、その独自規格が正直イマイチだったからだ。だが現代の自動車産業では巨大なグループ化が進んでおり、たとえばプジョー/シトロエン/フィアット/アルファロメオといったあたりはすべて「ステランティス」という巨大グループに属している。そこでは車台やエンジン、トランスミッション、制御系システム、そして鬼門だった電装系ユニットもブランドの垣根を越えて共有され、ボッシュやアイシンといったメガサプライヤー製が採用されている。
つまりイタフラ車といえども、“中身”は良くも悪くも世界基準の安定した製品であり、その上に、各ブランドのデザインや味付けが乗っているという状態なのだ。それゆえ「アルファロメオだから電気系統が弱い」というような理屈は、現代においては成立しにくくなっている。
そして、かつてのフランス車を「壊れるクルマ」の代名詞に仕立て上げた最大の戦犯は、間違いなく「AL4」と呼ばれた4速ATだろう。ルノーとプジョー・シトロエンおよびシーメンスが共同開発したこのトランスミッションは、フランスの道路環境下で使うぶんには問題なかったのだが、日本の高温多湿な環境やストップ&ゴーの多い渋滞には弱く、多くの日本人オーナーを悩ませた。
だがいまのラインアップを見てほしい。現在のステランティス系モデルやルノー車の多くは、日本のアイシン製8速ATや、ドイツのゲトラグ製DCTを採用している。つまり、世界でもっとも信頼性が高いともいわれる日本製のトランスミッションや、技術大国であるとされるドイツ製のトランスミッションを搭載しているのだ。
そして「信頼のドイツ車」という神話にも、若干の陰りが見えている。近年のドイツ車は過度なハイテク化と複雑な制御システムを追求するあまり、皮肉にも故障のリスクがけっこう高まっている側面もあるからだ。
たとえば最新のメルセデス・ベンツやBMWが搭載する巨大なデジタルスクリーンや、高度な運転支援システムなどは修理費用がきわめて高額であり、センサーひとつ、プログラムひとつのバグで走行不能に陥ることもある。
それに対してルノーやプジョー、フィアットの主力モデルは、ドイツ車に比べれば依然としてシンプルな設計を保っている(場合が多い)。過剰なハイテクに頼りすぎないパッケージングは結果として、長期的な維持における致命的な故障のリスクを下げているともいえるのだ。
