
この記事をまとめると
■バイオマスとは「生物由来のエネルギー資源」のことをいう
■インドでは牛糞から燃料を生むスズキの新ビジネスが始動している
■スズキのバイオマス事業はインドのインフラ整備を手助けするという側面もある
スズキがインドでバイオマス事業を開始
自動車燃料の話で、たまに出てくる「バイオマス」という言葉。具体的に何を意味しているのか。国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構(JETRO:ジェトロ)は以下のように説明している。
・バイオマス(biomass)は、生物を表す「バイオ(bio)」と、量を表す「マス(mass)」 を組み合わせた造語。
・世界的には厳密な定義はない。
・一般には「エネルギー源として利用可能な生物由来の資源」を用いる。
・日本の法律上は、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」で定義。動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用できるもの。原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。
その上で、バイオマスの種類はさまざまある。例としては、木材(間伐材や建設廃材)、農業残渣(稲わら、もみ)、藻類、古紙、食品廃棄物、そして家畜ふん尿などだ。
家畜ふん尿といえば、スズキがインドで牛糞を使ったバイオマス事業に着手していることが、日本でも広く知られているところだ。
改めて紹介すると、インドグラジャード州バナスカンタ地域アグサラのバイオガス・プラントが2025年12月6日に稼働した。スズキ初となるCNG車燃料用のバイオガス(CBG)拠点だ。1日あたり最大約100トンの牛糞から約1.5トンのCBGを生産・販売すると同時に、有機肥料も生産・販売する計画だ。約1.5トンのCBGによって、CNG車約850台が1日に走行するために必要な燃料の量に相当する。
スズキの鈴木俊宏社長は「インドの農村がもつ豊富な資源を有効活用して、カーボンニュートラルな循環型の社会の実現に向けて取り組む」とコメントしている。
近年、循環型の社会システムを「サーキュラエコノミー」と呼び、世界の国や地域で新たな試みが始まっている。これは経済活動が大きな、いわゆる先進国でも有効なカーボンニュートラル対策であるが、たとえばインドの事例のように、酪農事業の規模によって独自の方法が考えられる。
ただし、一般的にはバイオマスに対する国や自治体の支援の規模は限定的であり、またバイオマスにかかわる企業の規模もあまり大きくないケースが目立つ。潜在的な可能性は大きいものの、投資効果が低かったり、資源の奪い合いが起こって結果的に資源の価格が高騰したりと、導入に向けた課題はさまざまある。
そうしたなかでスズキは、乗用車市場の4割強のシェアを誇るインドを代表する企業であり、インド政府とのつながりも深い。牛糞を使うバイオガス事業は、スズキにとって単なるビジネスではなく、インドにおける公共的なインフラ整備を手助けするという側面がある。
