
この記事をまとめると
■建設業界では人手不足が深刻だ
■一部の重機では自動化技術を取り入れて少ない人で現場をまわせるようになっている
■このまま自動化が進めばいずれオフィスにいながら重機を動かせるようになるかもしれない
建機の自動化が現場を変える
昨今の人手不足は建設業界も例外ではなく、現場における建設機械の効率化・最適化が図られている。なかでも注目すべきは、昨年から今年にかけて現場投入が進んでいる「高速走行ミニホイールローダー」や、「省人化バックホー(自動化した油圧ショベルなど)」であろう。これらは単なる作業機械の域を超え、もはや「知能をもった移動体」へと進化を遂げているといっても過言ではない。
従来のミニホイールローダーは、現場内での小まわりは利くものの、最高速度は時速15km程度に留まるものが多かった。しかし、最新モデルであるキャタピラーのCat903(高速走行仕様)では、駆動系の制御を高度化することで、小型ながら25km/hという安定した「高速走行」を実現しているのだ。
その最大の狙いは、現場間の自走移動の効率化である。これまでは近距離の移動でも積載車が必要になるケースが多かったが、高速で移動できるようになったことで、都市部の細い路地から隣の現場まで「軽快に駆け抜ける」ことが可能になったのだ。その秘密は、電子制御式HST(油圧駆動変速機)の進化にある。クルマでいうところのCVT(連続可変トランスミッション・無段変速機)に近い感覚で、アクセル操作ひとつでシームレスな加速と、強力なエンジンブレーキを両立。また、足まわりには油圧サスペンションや振動減衰システムが導入され、高速走行時に発生する前後の揺れを劇的に抑制している。オペレータの疲労を軽減すると同時に、バケット内の荷こぼれを防ぐことができるのだ。
一方、建機の代名詞ともいえるバックホー(油圧ショベル)では、省人化や自動化の技術が多く取り入れられている。これには、建設業界が直面する「2024年問題」や、熟練オペレータが退職・引退などで減少することに対して、経験の浅い若手でもベテラン並みの精度で作業できる環境を整えることに狙いがある。
なかでも注目されている技術のひとつに、3D-MC(マシンコントロール)がある。これは、GNSS(衛星測位システム)と車体各部のセンサーを連動させ、バケットの刃先の位置を数センチ単位の精度で把握するシステムだ。さらに、設計データに合わせてブームやアームを「半自動制御」する機能などもある。これらを駆使することで、レバーを引くだけでバケットの刃先が地面を削りすぎないように、自動で高さを固定することができる。これにより、従来は必要だった「手元作業員(地上で深さを測る人)」が不要になり、現場の省人化と安全性が飛躍的に向上することになるのだ。
これらの技術が目指す先は、「完全自動化・遠隔操作化」であるといってよい。現在、5G通信を活用した遠隔操作の導入が始まっており、将来的にはオフィスにいながらにして全国各地の現場で建機を操ることが可能な「テレワーク工事」が当たり前になるだろう。さらに、AIが土の特性や地形を解析して最適な掘削ルートを自ら判断し、オペレータを介さずに稼働する「完全自律型」の建機も現実化しつつある。
建設機械は今、単なる「道具」から高度なセンサーと制御ユニットを搭載した「自律型作業ロボット」へと変貌を遂げようとしている。公道を走るクルマの自動運転技術と、過酷な現場で働く建機の自動化技術。このふたつが融合したとき、日本のインフラ整備は劇的なスピードアップを果たすに違いない。
