
この記事をまとめると
■ホンダは生成AIを使い歩行者保護を考慮した車体造形開発を効率化
■AI活用で新車デザイン工程を約4割短縮する可能性が見えてきた
■AI時代でも新しい価値や心地よさを生む役割は人間に残される
AIはデザイナーを奪うのか
ホンダは、生成AIを新車のデザインに活用しているという。デザイナーという仕事が将来なくなっていくのだろうか? 今回ホンダが実現したのは、AIとの対話を通じ、デザイナーの創造した造形が歩行者保護に適合しているかを検証するのだという。この技術開発は、2025年の社長賞を受賞したとのことだ。
これまでは、デザイナーの考えた造形が歩行者保護の性能を満たしているかどうかを、過去の経験や知識、シミュレーションを活用して検証してきた。それに対し、AIと対話を重ねることで条件を満たす立体的(3D)造形を複数AIが提案し、そこから煮詰めていく。これにより開発時間を短縮することができたという。AIの活用によりデザインの開発時間を約4割削減できる期待もある。
この手法は誰でも簡単にできる通常の言葉で自律的に利用できるため、より多くのデザイナーが使えるようにしている。かつて日本車は、ほぼ4年ごとのモデルチェンジをしてきた。それを短縮する動きはすでに起きている。ところが中国のメーカーは、2年ほどで新車を出してくる。なかには18カ月(1年半)でという話もある。それは自動車先進国である日米欧の脅威だ。
一方で、新車に対する安全や環境、そして自動運転。さらに規制対応や新しい価値の搭載など、自動車メーカーがやるべき仕事は増えるばかりだ。開発工程をいかに効率化するかは世界の自動車メーカーの喫緊の課題である。
新車の造形の開発期間が約4割短縮できるなら、それはまさに社長賞に値する成果といえるだろう。同時に歩行者保護性能が一層高まるのであれば、所有者や利用者のみならず道路を共有するすべての人の安心につながる。
しかし、AIの普及は人間の仕事を奪うとの懸念が一般にいわれている。デザイナーという職業もAIに奪われてしまうのだろうか。それは人間次第、デザイナーを志す人次第だろう。AIですべてが解決するわけではないはずだ。人がかかわる意味をきちんと理解し、行動する意思が不可欠になる。
EVや自動運転を含めて新しい価値が創造されるなか、実際に暮らしを営む人の心地よさや快適さにいかに適合できるかの視点が不可欠になる。それを生み出せるのは人間ではないだろうか。AIは過去の事例から理想像を探し出し、組み合わせ、よりよいモノや事柄を生み出すことができても、世のなかにまだない新たな価値の創造や、そうしたものや社会が人間にとって快適であるかどうかは、人間の感じ方次第である。
噛み砕けば、「AIに依存するだけで幸せを実感できる社会になるのか?」ということであり、そこは人間が基本的価値を決めなければならないのである。
