
この記事をまとめると
■トラックでは実用性重視の装備が今後の進化の鍵を握る
■高機能シートと寝台が疲労軽減に大きく貢献
■タッチパネルや電子ミラーには改善を望む声も
乗用車の真似ではドライバーが満足しない
近年、大型トラックのキャビン内装備の充実ぶりには目を見張るものがある。マルチファンクションステアリングや大型液晶メーター、各種インフォテインメントシステムの採用など、一見すると高級乗用車さながらの装いだ。しかし、トラックドライバーが求める「本当にいい装備」の基準は、乗用車のようなステータス性や雰囲気ではない。疲労を軽減して質の高い休息をとれる実用的なものなのだ。
高機能エアサスペンションシート
長距離ドライバーからもっとも重要視されているのがシートである。なかでも、いすゞのギガや日野のプロフィアなどに採用されている、独・イスリングハウゼン社製の高機能シートは格段に評判がよい。このシートは、路面からの微振動をシャットアウトする「自動体重調整機能付きエアサスペンション」に加え、シートヒーターやベンチレーション機能を搭載している。これにより、腰痛の発生率が下がって夏場の背中の蒸れからも解放されるのだ。1日10時間近くをシート上で過ごすドライバーにとって、これほど疲労軽減を体感できる装備はない。
高機能ベッドマットレス
休息の質を左右する、寝台スペースの進化も著しい。なかでも三菱ふそうの現行型スーパーグレートや、ボルボFHが採用する厚手の高機能マットレスは、「自宅のベッドより眠れる」と評判だ。従来のトラックの寝台は「固いウレタンの板」に近いものが多かったが、最新モデルは体圧分散に優れた本格的なマットレスを採用している。限られた仮眠時間でも、深い睡眠をとることが可能になったのだ。
逆に、便利な最新装備でもまだ改善の余地を残すものも少なくない。乗用車のトレンドをそのままもち込んだものの、トラックの現場では使い勝手が悪くて不満が出ているものもある。
タッチパネル式センターディスプレイ
液晶画面ですべての操作を集約するスタイルは乗用車で定番化したが、トラックでは問題点も少なくない。トラックは走行時の微振動が多いため、画面の正確な位置をタッチするのが難しいのである。ブラインドタッチができないため視線移動を強いられ、安全上のリスクを感じるドライバーが多いのだ。「エアコンの温度調整や風量くらいは、手探りで回せる物理ダイヤルにしてほしい」というドライバーも多いという。
電子サイドミラー(CMS)
従来の物理的なミラーに代わり、カメラとモニターで後方を確認するシステム。ボルボFHの2026年モデルなどで、高度な機能が標準化されつつある。モニター映像は2次元の「平面」であるため、右左折やバック駐車時にトラック特有の「奥行き感(距離感)」が掴み難い。慣れるまでに、相当な時間を要するのだ。また、目のピントを「遠く(前方)」から「近く(車内モニター)」へ交互に合わせる必要があり、物理的なミラー以上に目が疲れるという声も。
これらのことからも明らかなように、今後の大型トラックに求められる装備は「乗用車的なハイテク感の模倣」ではなく、「トラックの運行環境に特化した機能の最適化」であると考えられる。たとえばキャビン完全独立型の「超省電力・24V直結クーラー&ヒーター」、生体センサー連動型の健康管理・シート自動調整システムなどといったものだ。トラックのキャビンは、単なる運転席ではない。日本の物流を支えるドライバーの命を守り、活力を養う空間として進化していくことになるのだろう。
