
マイナスイオンのリラックス効果は本当?
近年、カーエアコンへの普及率が高まっているイオン発生器。メーカーごとに独自の名称でエアコンや空気清浄機などに搭載し、消臭や除菌、花粉や微粒子に含まれる有害物質の分解などをアピールする。イメージ的には空気清浄機の上級版的なものだろうか。
厳密に言えば、空気中の浮遊物質を吸い込みフィルターなどで濾し取る清浄機に対し、いわゆるイオン式と呼ばれる空気清浄機は漂っている物質そのものを変質させて無力化させるもの。まずは、そのイオン式がどのようにして効果を発揮するのか、基本的なメカニズムをおさらいしておきたい。
そもそもイオンとは原子や分子が電子を放出する、もしくは受け取ることで電気的性質を帯びたもの。放出するとプラスの陽イオン、受け取るとマイナスの陰イオンとなり、その状態はもとの原子や分子より不安定。そこで陽と陰が磁石のように引き合い、反応して電子の偏りのない原子や分子に戻ろうとする。ちなみ
に、陰イオンと同一視されやすいマイナスイオンは化学用語ではなく、陰イオンが多い空気を感覚的に表現した和製英語。よく言われるリラックス効果などは立証されておらず、今回取り上げるイオンとは性格が異なる。
有害物質を無害化するラジカルによる化学反応
また、イオンのように電気的に安定したがる性質を、原子や分子が持つこともある。ここでは難しい説明は省くが、この状態のラジカルと呼ばれる原子/分子は、イオンと同じく化学反応が起きやすい。たとえば燃焼もラジカル反応のひとつだと聞けば、その急激さが想像しやすいだろう。
このラジカルによる化学反応を利用するのが、いわゆるイオン発生器の原理。そして主に、OHラジカルと呼ばれる物質が利用される。
OHラジカルは、触れた相手から水素原子(H)を奪って水(H2O)になろうとする。一方、Hを奪われた物質は、分子の構造が変化することで、もともと持っていた性質が失われるので、有害な物質が無害化するという仕組みだ。
その反応する力は長年にわたり、脱臭や除菌に使われてきたオゾン(O3)が酸素原子(O)と結びつこうとする場合より強いと言われる。また、オゾンで懸念される人体への毒性や、独特の匂いなどがないのもメリットだ。
このOHラジカル、メーカーによって発生方法が異なる。クルマへの採用例が多いものでは、シャープの”プラズマクラスター”の場合、水の粒子をまとった水素イオンと酸素イオンを放出し、菌などの表面で結合して発生する。
プラズマクラスターとナノイーは何がどう違う?
もうひとつがパナソニックの”ナノイー”。こちらはOHラジカルを内部に含む水の粒子を生成して放出する。
それぞれの特徴を比べてみよう。プラズマクラスターは物質への結合力が強いイオンを放出するため、浮遊物をとらえて壁などに付着させる空気浄化能力は高い。しかし、すべてのイオンがOHラジカルになるとは限らない。
一方、ナノイーは、完全に水が表面を覆っているため、浮遊物への結合力ではイオン単体に一歩譲る。ただし、最初からOHラジカルが生成されているため、除菌や消臭などの効果を発揮する確率は高い。
また、空気中では瞬間的に反応して消滅してしまうOHラジカルの持続時間が、水に覆われることで10分程度まで長くなる。ちなみに、OHラジカルを含むこの水の粒子の大きさは約5〜20㎛で、スチームの約6000㎛よりも細かいため繊維の内部などにも浸透して作用すると言う。
もうひとつ、大きな違いがメンテナンス性だ。プラズマクラスターは、イオン濃度によって3種類あるが、高濃度の2タイプは、イオン発生ユニットの交換時期が指定されている。また、後付けの車載型には本体そのものの買い換えが必要なものもある。ただしカーエアコン内蔵型は、とくにユニット交換に関するアナウンスはされていない。
対するナノイーは、上位タイプであるナノイーXの3種類も含めてメンテナンスフリー。なぜなのかパナソニックに尋ねると、かなり興味深い話を聞くことができた。
