
この記事をまとめると
■横浜周辺では「あかいくつ」という周遊バスが走っている
■専用の外装とインテリアを有しており横浜を象徴するバスとして愛されている
■運転手は横浜のガイドができる接客のスペシャリストだ
横浜名物「あかいくつ」ってなんだ?
横浜のみなとみらいや元町・中華街エリアを訪れると、ひときわ目を引く赤いクラシカルなバスに遭遇する。それが、横浜市交通局(横浜市営バス)が運行する、観光スポット周遊バス「あかいくつ」である。2005年の運行開始から20年以上、「横浜観光の顔」として親しまれている。
最大の特徴は、大正から昭和初期に横浜の街を走っていた路面電車(横浜市電)をイメージした、レトロモダンな内外装だ。
・エクステリア
ノスタルジックな丸目のヘッドライトや、ルーフ後方に設置されたダブルの「飾り煙突」など、ディテールへのこだわりが光る。
・インテリア
車内に一歩足を踏み入れると、板張りの床や木目調の壁面、真鍮風の手すりや美しい吊り革などが乗客の目を楽しませる。
・窓と天井
景色を存分に楽しめるようにサイドの窓は一般の路線バスよりも大きく取られており、天井後部には天窓(ガラスルーフ)が装備されている。
このクラシカルな外観から、「特注のワンオフ」だと思われがちだが、じつはベースとなっているのは国産路線バスだ。初代車両には、日野自動車の中型ノンステップバス「レインボーHR」(9m・10.5m車)を採用。その後の乗客数増加に伴い、ジェイ・バス製(いすゞ・日野)の大型バス「ブルーリボンII」や、現行型の「ブルーリボン」がベース車両として順次導入されてきた。
細部の形状や骨格に注目すると、普段見慣れた路線バスの面影を見ることができるだろう。さらに近年では、環境に配慮したハイブリッド仕様の最新型も投入されているそうだ。ターゲットは、横浜を訪れる国内外の観光客。そのため、主要な名所を効率よく1方向で循環するルートが組まれており、運賃は一般の市営バスと同じ大人ひとり240円(IC・現金一律)に設定されている。
そして、このバスの魅力をハード面以上に高めているのが、ハンドルを握る運転手(乗務員)の存在だ。「あかいくつ」の運転手は、市営バスの乗務員のなかから選抜された、接客のスペシャリストである。単に車両を動かすというだけではなく、車内アナウンスを通じて観光名所の見どころや横浜の歴史、旬のイベント情報などを独自の語り口で案内する、いわゆる「ガイド」としての役割も担っている。その温かいおもてなしの精神は、「あかいくつ」に乗ること自体を、旅のエンターテインメントに昇華しているといってよい。
「あかいくつ」が登場したのは、2000年代初頭から急速に進んだ「みなとみらい21地区」の開発、および「赤レンガ倉庫」をはじめとする歴史的建造物の観光遺産化が理由である。点在する新旧の観光スポットをシームレスに結び、都市の回遊性を高めるための交通インフラとして誕生したわけだ。
運行開始から20年という節目を越えたいま、横浜の観光交通は連節バス「ベイサイドブルー」や水上バスなど、多彩なモビリティが登場して互いに連携を強めている。そのなかにあっても、街の風景に情緒を添える「あかいくつ」の象徴性は不変だ。単なる移動手段を超えた「横浜の動くランドマーク」として、これからも独自の存在感を放ちながら走り続けるに違いない。
