
技術の進化でヘッドライトのデザインは変化した
100年を超える長い自動車の歴史のなかでは、当然ライト自体もさまざまな変化を続けてきました。そこで、ここではヘッドライトの変遷を駆け足で振り返ってみたいと思います。
1890年頃まで、クルマの「明かり」としてはロウソクやランタンが使われていましたが、「ライト」の起源となったのは1908年にT型フォードが採用したアセチレンタイプと言えそうです。これは炭化カルシウムに水を加えることで発生するアセチレンガスを使ったもので、あくまでも燃焼式だったことが特徴です。
その後、1910年頃から使われ始めたのが白熱球です。1879年にエジソンが発明していたのは有名な話ですが、クルマに使用できる強度などを確保するまでには少々時間を要したようです。光を反射板で前方へ照らすことで高い照度を得ることができ、クルマのライトとして大きな一歩
となりました。
シールドビームの登場でリトラが誕生した
この白熱球の発展版が、1939年に登場したシールドビームです。初期の白熱球は発光体であるタングステンによる黒ずみが難点でしたが、バルブとレンズを一体化したシールドビームでは大型化が可能となり、黒ずみの解消に成功しました。このシールドビームを含めた白熱球時代は自動車の近代化と重なり、たとえば初代クラウンの2灯や2代目ブルーバードの4灯など、往年の名車の「顔」を多く生み出したのです。
ところで、このシールドビーム時代に登場したのが、いまだ人気の高いリトラクタブルライトです。当時、米国では1940年から1983年まで同一規格のシールドビーム使用を義務付けていましたが、すべてのクルマが「同じ顔」になることを恐れたメーカーが生み出した方式でした。オープン時にライトの地上高を確保しつつ、格納時には低いボンネットを実現できることから、フェラーリやポルシェなどスポーティなクルマに採用され、日本では1967年のトヨタ2000GTが初採用。その後、初代RX-7などへ継承されました。
異形のデザインを生んだハロゲンライト
シールドビームに続いたのが、1959年に米国で発明されたハロゲンライトです。これも白熱球の仲間ですが、ハロゲンガスを封入することでフィラメントを高温化し、より明るく長寿命である点が特徴。とくに1970年以降に広く普及しました。反射鏡などの配光技術が進化したことで形状の自由度が高まり、いわゆる「異形型ライト」が登場します。大ヒットした5代目ファミリアなどの角型ライトは、当時の直線的なスタイリングによくマッチし、その後のレンズの樹脂化によってさらに複雑な形状を生み出したのです。
この配光技術の進化版として登場したのがプロジェクターライトです。凸型レンズで光を拡大投影する構造により、小型・軽量で正確な投射が可能となりました。1986年の2代目BMW 7シリーズで初採用され、3代目インテグラや初代セフィーロなど、その特徴的な「顔」はじつに印象的でした。
続く1990年代に登場したのがHIDタイプで、キセノンライトやディスチャージライトがこれに当たります。従来のフィラメントではなく、高電圧を電極間で放電させることでキセノンガスを発光させる構造で、独特の青白い光が特徴です。
HIDも2代目BMW 7シリーズから採用されましたが、寿命と明るさがハロゲンの2倍以上、消費電力は半分という効率の良さから急速に普及しました。4代目シーマの通称「バルカンヘッドランプ」や、初代〜2代目スイフトスポーツの精悍なライトが話題になりました。
