
この記事をまとめると
■トラックは運転席が高い場所にあるため前方を確認しやすい
■逆に運転席から上(高さ)は見えにくく高架などにぶつける事故も少なくない
■頭上を確認することはトラックを運行するうえで欠かせない要素だ
トラックで本当に危険なのは”上”
トラックの運転席は乗用車よりはるかに高い。遠くまで見渡せるため、前方の状況には早く気づける。しかし、その高い視点にも弱点がある。それは、運転席からもっとも確認しにくい、車体よりさらに上の空間だ。橋桁や倉庫の庇が迫っていても、ドライバーの視界からは距離感をつかみにくい。トラックにとって本当に怖い障害物は、前でも横でもなく頭上にある。
道路を走る車両の高さには一般的な制限があり、原則は3.8メートル、高さ指定道路では4.1メートルまでとされている。これを超える車両は、特殊車両の通行許可などが必要になる。ただし、上限以内ならどこでも通れるわけではない。古いガード下やトンネル、構内通路などには、それより低い高さ制限が設けられている場所もあるからだ。
わかりやすい例が、橋桁や鉄道高架への衝突である。乗用車なら問題なく通れる道路でも、背の高いウイング車や冷凍車、海上コンテナを載せたトレーラーでは通過できないことがある。カーナビが案内した最短経路にそのまま入り、直前で高さ制限標識に気づいても、長い車体では簡単に方向転換できない。狭い道路をバックで戻る危険な状況にもなりかねない。
公道だけでなく、配送先の構内にも危険は多い。倉庫の庇、荷さばき場の屋根、工場内の配管、門型看板、照明、電線、立木の枝などである。大型車向けの施設でも、増築や設備変更によって通行可能な高さが変わっている場合がある。入口は通れても、構内で向きを変えた際に車体上部が庇に入り込むこともあり、「正面から通れたから大丈夫」とは限らない。
さらに注意したいのが、車両の状態によって高さが変わるケースだ。ダンプの荷台を上げたまま走り出せば、橋桁や電線に接触する危険がある。トラッククレーンではブーム、荷役車両では作業装置の格納確認が欠かせない。ウイング車も左右のウイングを完全に閉じずに移動すれば、建物や設備を巻き込む事故につながる。出発前には、「上になにか残っていないか」を確かめる必要がある。
積み荷も頭上リスクを生む。重機、建設資材、機械設備などは荷台より高く張り出すことがあり、積載後の全高を把握しなければならない。シートやロープが風でもち上がり、電線や標識へ引っ掛かる可能性もある。空車時に通れた経路が、荷物を積んだ帰りには通れないことも起こり得る。
難しいのは、ドライバーが車体上端を直接見ることができない点だ。左右のミラーには車体側面が映るが、屋根と障害物の間隔まではわかりにくい。余裕があるように見えても、路面の勾配や段差で車体が傾けば接触することがある。入口では通れても、後輪が坂に乗った瞬間に車体前方がもち上がる場合もあり、表示された高さと車両の数字だけを比べればよいわけではない。
頭上事故は、車体や積み荷を壊すだけでは終わらない。橋桁や架線、建物設備を損傷させれば、道路や鉄道、施設の機能を止め、多額の損害につながる可能性がある。そのため運行前には車両と積み荷を含めた全高を確認し、高さ制限のある経路を避け、初めて入る構内では降車確認や誘導を受けることが重要になる。
前方は目視でき、横はミラーで確認できる。しかし、頭上には常に確認できる視界がない。わずかな思い込みや確認不足が、車両破損や荷物事故、施設全体を止める事態へ直結する。大型トラックにとって「上を見る」ことは、安全運行を成立させるための基本なのである。
