
機械が持っている性能を100%引き出すナラシ
近年の新車の品質はきわめて高く、「ナラシ運転は不要」だとする説がある。じつはコレ、本当の話だ。
工作機械の精度の向上や品質管理の徹底によって、かつてとは比較にならないほど完成度は高まり、各部品の寸法や重量、あるいは強度や軸受け部分のクリアランス(=間隔)などにバラツキはほぼないと考えていい。したがって、クルマをたんなる移動手段と割り切って、「普通に使う」分にはナラシは不要なのだ。
もっとも、どんな機械も組み上がってすぐに大きな負荷をかければ部品同士がうまく馴染まず、本来得られるはずのスムースな動きなどが期待できなくなるのは当然のこと。ナラシの目的は、その機械の持てる性能を100%引き出し、長期間維持することにある。
新車もしかり。ナラシもせずにガンガン全開で走らせれば、ある時点を境にガクッと衰えが目立つようになる。逆にナラシをしておくと急激な性能劣化は起こりにくくなるものだ。
では、なぜナラシをするとそういった効果が得られるのか? 確かにクルマをつくる工作精度はかつてと比べものにならないほど向上した。しかし、エンジンをはじめトランスミッション、デフなどの内部で金属製の部品がゴリゴリこすれ合っているのはいまも変わらない。
たとえばエンジンの可動部は、一見ツルツルに仕上げられているように見えるが、顕微鏡レベルで見てみると表面に微細な凹凸がある。いくら精密に機械加工をしたとしても、「これ以上はできない」という限界があるのだ。
そんな部品同士は潤滑油で守られていたとしても、高速で動けば削れて金属粉やバリが出るのは当然。いや、むしろ互いに擦れ合ううちに表面がピカピカに磨かれて相性よく馴染み、スムースに動くための”アタリ”がつく。
そして不要な金属粉などで汚れたオイルを排出し、新しいオイルに交換することで初めてナラシが完了するのだ。
1カ月/1000kmのオイル交換は必須
まずエンジンの場合。まだアタリのついていない状態で高回転までまわしてしまうと、内部の軸受けメタルや、ピストン、シリンダーの内壁に余計な傷がついて動きが渋くなったり、圧縮漏れの原因になったりする。納車後、走行距離1000km程度までは回転数の上限を3000〜4000rpmに抑えることを基本に考えたい。
トランスミッションがATやCVT、DCTの車両では、なるべくキックダウン(エンジン回転が高まる低速ギヤへの自動変速)しない運転を心がけ、MT車の場合はノッキング=異常燃焼を起こしかねない4速以上の高いギヤでの低速走行は厳禁。
そして1000km/1カ月点検の際にオイル交換を必ず行う。「もったいない」と思われるかもしれないが、新車の段階では大量の鉄粉がオイルに混入する。フィルターで濾過し切れなかった鉄粉まみれのオイルがエンジン内部を循環すれば悪影響が生じることは理解できるだろう。キタナイものはすぐに出す。これは人間も同じことだ。
1000km程度走れば初期のアタリはついているはずで、周囲の状況に応じてときどき5000rpmくらいまで回転数を上げても問題ないはずだ。ただし、急な加速ではなく、徐々に踏み込むアクセルワークでエンジンへの急激な負荷を抑えたい。
